NEW

阿賀野川の畔で

港家小そめの「コソメキネマ」 第1回

阿賀に生きる

 2023年に公開された川上アチカ監督の『絶唱浪曲ストーリー』という浪曲のドキュメンタリー映画があります。私も出演しておりまして、それがきっかけでドキュメンタリー映画もポツポツ観るようになりました。

 そんな中で観たのが、『阿賀に生きる』という作品。1992年に公開され、公開当時、大変話題になった佐藤真監督のドキュメンタリー映画です。新潟水俣病をテーマにした映画ではありますが、出演する阿賀の方々とその暮らしがなんとも魅力的で、阿賀の風景の美しさと共にその素晴らしさがスクリーンから溢れ出ていて、観終わった後、映画の中の人たちが好きになってしまうような作品でした。たくさんの人に長く愛される理由がよくわかります。

 ほかの佐藤真監督作品も観たいと思っていたところ、昨年、渋谷で特集上映がはじまり、時間を作って通いました。その上映の中で、トークがある回もありました。『絶唱浪曲ストーリー』の編集を担当された秦岳志さんは、佐藤真監督作品にも関わった方で、その秦さんがトークに登壇されるということを聞き、伺うことに。

 その時にトークゲストとして新潟からいらしていたのが、旗野秀人さんでした。旗野さんは『阿賀に生きる』を作る時に尽力された方で出演もされています。映画製作当時を知っている方々のトークは大変面白く、楽しく拝聴しました。

 終了後、ロビーに出ると旗野さんがいらっしゃいました。『絶唱浪曲ストーリー』も観ていただいたようで、声をかけていただき、明るく朗らかな調子で「俺の葬式に来てねー」と言いました。「初対面なのに、葬式? 面白いことを言う変な人だなぁ」と思いました。

 その後、秦さんから、旗野さんが主催している「『阿賀に生きる』追悼集会」へのお誘いがありました。「追悼集会」というものがよくわからないけれど、興味が湧き、旗野さんともお互い生きてるうちに会わなければと思い、5月、開催地の新潟・咲花温泉に向かいました。