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阿賀野川の畔で

港家小そめの「コソメキネマ」 第1回

阿賀の岸辺にて

 追悼集会では『阿賀に生きる』を上映するのが毎年の恒例で、数年前からは「阿賀に生きるから生まれた映画祭」というタイトルで、ほかのドキュメンタリー作品も上映しているようでした。今年は『絶唱浪曲ストーリー』の上映もありました。誰でも参加できて、30年以上も続いているとのこと。

 会場は、柳水園という旅館の大広間。大きなスクリーンが設置されていて、ビールや日本酒を片手に、みんなで映画を観ました。『阿賀に生きる』は16ミリフィルム上映で、映写機の回る音を楽しく聞きながら。

 上映後は、大交流会。昼間の柳水園が終わると、宿泊する別の旅館で上映会+大宴会。合間に温泉に入り、その他、『阿賀に生きる』の監督や映画スタッフが3年間泊まり込んだ「阿賀の家」の前で、撮影の小林茂監督から当時のエピソードを聴いたり、お墓参りに行ったり、とにかく濃密な時間でした。

 来ている人は、年齢も職業も参加理由もバラバラで、映画監督もいれば、お寺のお坊さんも大学生も子供もいる。「毎年、同じ映画観てよく飽きないよねぇ」とニコニコしながら何十年も参加している人、私と同様に初めて来た人、『阿賀に生きる』が大好きな人、「『阿賀に生きる』をまだ観ていないんですよー」という人などなど。

 バラバラなのに人との距離が近く、追悼集会という名前でしたが、明るく賑やかな空間でした。こういう場所はありそうで、ないかもしれません。一度にこんなにたくさんの人と話をしたり、酒を飲み交わしたことはないような気がします。

 その中心にいる旗野さんは、誰でもウェルカムな雰囲気の、お酒が好きで、始終楽しそうに人を気遣い、真面目な話をしていたと思ったら、急にふざけて、冗談を言い始めたり、ハッとするような一言が返ってきたり。自由で懐の深い、でも修羅場を越えてきた感じのする方でした。コミュニケーション能力が滅法高く、話も大変面白い。旗野さんの明るさが場の親密さを作っていた気がします。

手書きの看板とスクリーン