便利な言い訳をください

柳家さん花の「まだ名人になりたい」 第1回

便利な言い訳をください

自画像(画:柳家さん花)

柳家 さん花

執筆者

柳家 さん花

執筆者プロフィール

永遠の五月病

編集部から色々なお題をいただいた中から、今月は「五月病」を選んだ。理由は、その言葉を見て、すぐに親近感や愛着が湧いたからだ。私は、永遠の五月病。生まれた時は八月だが、死ぬ時は五月病。私は五月病の病原体――。自然にそう思っていたし、そんな自分を誇らしく思っていた。

一応、意味を調べようと検索した。「新学期や入社など、新しい環境に適応できず、心身の不調を訴える状態」。これを読んで気がついた。なったことがない! 私は環境の変化に関係なく、常に不調を訴え、無気力に生きてきた。親近感とか愛着とか言いながら、本当は少し下に見ていた五月病。私は健康な怠け者。

いつもそうだ。私は常に何かを馬鹿にしている。何かではない、全部だ。無意識のうちに、なにもかも心底、軽蔑している。そして、ふとした瞬間に自分の方が劣っていることに気づく。もうだめだ。いや、果たしてそうだろうか。私は自分が好きだ。他人を無意識のうちに馬鹿にしている自分を愛している。こうして、一人勝手に落ち込み、励まし生きている。

私だって、環境の変化に影響は受ける。人前に出れば、よく思われたい。学校や、行ったことはないが会社など、これから何年か共に過ごす人たちがいる場所ならなおさらだ。その証拠に、私は学校でうんちをしたことがない。我慢してきたというより、みんなのいる建物の中では、その気にならないのだ。野糞はある。二回。外だが、知っている人は周りにいなかったので、恥や後悔はない。友だちや顔見知りには、「ひょっとしたら、うんちをしない人」だと思われたい。

頭はよくないし、足も速くない。人とつまらないことで喧嘩したり、優秀な人を妬んだり、余計なことを言ったりする。でも、「うんちだけはしない人」。今でも少しそう思われたい。