外題付 ~浪曲は天下を取った芸能だ!
東家一太郎の「浪曲案内 連続読み」 第1回
- 連載
- 浪曲
人を熱狂させる力
浪曲は、もともと「浪花節」と云われ、明治時代のはじめくらいに芸の形ができ上がりました。最初は大道芸。数人から数十人のお客を集めていた浪花節が、人気が出て寄席へと進出し、百人単位。さらにブームとなって、千人単位の大きな劇場で興行するようになります。
やがて、昭和に入ってから「浪曲」という名に変わります。当時は、新鮮な名前でした。
浪曲には、第1期から第5期まで黄金時代と云われるほどの大ブームの時代がありました。明治30年代(1890年代)くらいから、昭和39年(1964年)くらいまででしょうか。人気浪曲師とそれを支える曲師が次々と現れ、それぞれの節、芸を作り上げ、売れに売れました。ラジオとレコードの時代です。芸能人長者番付のトップ10に浪曲師が何人もランクインしたという、今ではとてもじゃぁないですが、考えられません!
しかし、ブームの終焉は世の常。テレビの時代となって昭和40年代から浪曲人気は低迷します。ところがどっこいド根性、昭和・平成・令和と、浪曲はミャクミャクと現代に継承され、今もほら、この通り生きています。
150年に渡る小難しい浪曲の歴史のお勉強はさておき、ここで一番大事なのは、“浪曲は天下を取った芸能だ!”ということ。それだけ人を熱狂させる力が浪曲にはあるという事実。これは私たち浪曲家にとって大きなプライドであり、希望であり……、そして、賭けでもあります。へへへ。
浪曲は日本のミュージカル
しかし、現実は
「浪曲聞いたことある人ォー?」
「……(シーン)」
「今の日本人は100%浪曲を知らない」と思って、私は心が傷つかないように、「浪曲を知っている人がいたらラッキー」ぐらいの心持ちで生きています。
一方で、ありがたいお言葉も時々、耳にします。
「子どもの頃、姉とラジオにかじりついて浪曲を聴いたのよ」
「おばあちゃんの膝の上で、ラジオから流れて来た浪曲、楽しかった。懐かしいわ」
「浪曲聴いたの、今日が50年ぶりなのよ」
昭和100年の今年、昭和30年代にラジオやレコードや実演で浪曲を聴いていたという人は、すべからく70代以上でいらっしゃるのです。この浪曲が抱える現状は、大ピンチ!と思いきや、大チャンスでもあります! こんなにも心強い浪曲ファンがご健在でいらっしゃる今、私はもう一から浪曲を開拓していくことに決めました。
Q. 浪曲って何?
A. いわば日本のミュージカルです。浪曲師と三味線(曲師)の2人で物語を語っていく、ストーリーと音楽が融合した日本の素晴らしい芸能です。
Q. あーそう。何がいいの?
A. 笑って泣いて感動させます! 言葉で言ってもわかりませんので、ぜひ一度聴いてもらいたいです。
Q. YouTubeで聴けるの?
A. はい、YouTubeでも「東家一太郎」で検索してもらえれば出てきます。あっ、アニメ 『ONE PIECE』の「ワノ国編」の最終話、第1085話の浪曲パートをさせていただいてますので、アマプラやNETFLIXとかで見てください!
Q. えーそうなの。『ONE PIECE』は好きだわ。見てみるわ。
A. そうですか!ありがとうございます。『ONE PIECE』は面白いですよね……。あの、これ私の会のチラシなんですけど、ご都合よろしかったら、生の舞台を聞きにいらしてください。
Q. その日は予定があるから行けない。
A. そうですか、残念です。私のホームページに出演情報がありますので、ご覧いただけましたら嬉しいです。
Q. あーそう。
A. 浅草の木馬亭(もくばてい)という寄席にも毎月2回出ています。毎月1日から7日まで昼間やっている日本で唯一の浪曲の寄席なんです。
Q. へぇー浅草で。いいね。じゃぁ今度行ってみようかな。
A. ぜびぜひ、浅草グルメのオススメのお店もありますので、今度ご一緒に呑みましょう!
と、なかなか生の舞台を聞きにいらしていただけるまでは大変です。でも一度聞いていただけたらきっと「浪曲って初めて聞いたけどいいもんだなぁ。また聞きたいな」と思っていただけます。また、「お客様に必ずご満足いただける舞台を」という想いで毎回、浪曲を務めています。