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流れもの日記 (後編)
鈴々舎馬風一門 入門物語
- 落語

真っ白な半紙に、お内儀さんが書いてくれた名前
見つからない答え
本当に、よく僕のような者を弟子に取ってもらったと思う。
初めて直接お会いした時は、忘れもしない。師匠が末廣亭の出番終わり、新宿三丁目駅地下のルノワールだった。その時、熱意をただ一本やりにしゃべってもダメだと思っていたので、僕はパソコンを使ってパワーポイントの資料を作成することにした。
説明しやすいように組み立て、師匠を前にパソコンの画面を開きながら話した。思いのたけを熱意を込めてしゃべった。
僕だったら、こんなスーパー・ササダンゴ・マシンさんのような入門志願者は……嫌だ。しかし、そんな厚顔無恥な僕の話を嘲笑することなく、この時もうちの師匠は冷静に受け止め、耳を傾けていてくれた。普通だったら寄席のまくらで使われておしまいだ。
本気には本気で応えてくれる、師匠の人あたり、その人柄にますます志願の想いは強くなったと思う。
「大師匠の度量の広さと、師匠のやさしさに感謝」という言葉では追いつかない。言葉を超越した感情がある。いつかあの時の「どんどん取れ!」という言葉を輝かせるために、今も僕は今の自分と格闘し続けている。
馬風一門に加えていただいた時より、数えて10年以上が経った。弟子師匠、師弟関係とはいったい何なのか。いまだに答えは見つけられていない。わからない。