泣きっ面にう○○
柳家さん花の「まだ名人になりたい」 第3回
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私はゴッホ(画:柳家さん花)
あの窓の向こう、まだ雨
私は、先月の投稿を後悔している。それはお終いの方、普段本を読まない私がなんとなくエッセイってこんな感じで締め括りそうだ、と安直に考えて書いたことだ。
私には確かに忘れられない梅雨というものがある。それがどうにも人に伝えられない、はっきりとしない感覚で、良いとも悪いとも好きとも嫌いとも言えない。だから、伝えることをあきらめてしまっている。
でも、漠然としているのに忘れられない。
それは私が小学三年生、雨ばかり降り続いた日だから、たぶん梅雨、昼なのにぼんやりうす暗く感じる外を授業中、窓際の席、窓越しにただぼんやり眺めた――あの校庭の景色をかれこれ四十年忘れられず、年に数回思い出すのだ。
子供ながらに日々嬉しいことも嫌なこともたくさんあったはずなのに、ほとんど覚えていない。なのに、あの何でもない景色は忘れられない。やはり自分にとって、大切なことなんじゃないだろうか。
何か分類できないから、人に言っても言われた人が困るだろうから言わない。
でも言葉にならないから、何かの役に立たないから、どうでもいいわけではないはずだ。起きてる時間の半分は、うんこのことを考えている私にも曖昧だけど、大切なことがあるのだ。