ここもカフェ?と思って見ると美容院

朝橘目線 第1回

ここもカフェ?と思って見ると美容院

妻に誘われ、カフェについて行ったが…

三遊亭 朝橘

執筆者

三遊亭 朝橘

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街に溢れるカフェの風景

 「カフェ、多過ぎやしないか?」

 外に出るたびに、そう思う。大手のチェーン系から個人経営のお店まで、とにかくカフェはどこにでもある。カフェ経営者の方からすれば、大きなお世話だろうけど。

 『東京かわら版』(日本で唯一の演芸専門誌という、そろそろ国が予算つけて守るべき文化財)を手にした寄席の常連さんが落語会情報を見て、「噺家、多過ぎやしないか?」と言うのを聞いたら、複雑な気持ちになるだろうし。でも思うのは自由なので、カフェの乱立する街を見て、呆れるやら感心するやらの毎日である。

 同じく美容院も多いなあとは思うが、これについては、私の癖が強すぎる髪をどうにかしてくれる店に出会うまでかなりの年月を要したので、多くても需要というか、必要性はあるのかな、とは思う。

 ちなみに、私の髪を整えてくれているのは、千代田区は神田にある「The Barba Tokyo」という理容室なので、髪型にお悩みの殿方はぜひ。初めて来店した時の感想や感動は、その頃暇つぶしに書いていたnoteに書き殴っているので、ついでにそれもお読みいただきたく。

▼note(自由帳6頁目「男らしさ」)

https://note.com/choukitsu3ut/n/n1d5de945caea

琥珀色の苦い思い出

 特にカフェが多いのが、東京都江東区の深川、清澄白河から森下、木場くらいまでのエリア。おそらく、ブルーボトルコーヒーが日本初出店したのがあの界隈だったのがきっかけだと思う。確か、あの辺の雰囲気を称して「日本の西海岸」とか言ってたような気がする。

 どう感じようとその人の自由なんだろうけど、あの街は、うちの師匠・三遊亭圓橘(さんゆうていえんきつ)が生息する地域なのね。鬼出没注意のエリア。前座修行中は毎朝、師匠宅行って、怒られ絞られボロボロになって、重い体を引きずるように清澄通りを歩いた思い出が染みついている街なの。交番の裏の公園で、どれだけため息ついたことか。

 そういやあの公園、枝垂れ桜が綺麗だったのに、先日行ったら樹がなくなっていた。諸行無常だ。

 とにかくあのエリアは、私にとって琥珀色した飲み物を優雅に傾けながら街並みを眺め、流れる時に身を任せるような行為とはかけ離れているわけで。あの辺で何飲んでも、何食っても砂の味しかしない。

 こっちは、そこにいるだけで動悸、息切れ、目まい、その他諸症状に悩まされるってのに、こじんまりした空間に目いっぱいのセンスとアイディアを詰め込んだ内装を施して、焙煎から抽出までこだわり抜いた至極の一杯と、そいつを何倍も楽しめるスイーツを提供する店が立ち並び、そして、それを目当てに白のトップスと黒のボトムでなるべく手荷物少なくして、何ならスマホだけ持って週3くらいでジョギングもしくはジム通いして、自分磨き怠りません的な自己肯定感が服着て歩いているような男女が颯爽と闊歩しちゃってるってわけよ。おじさんには、眩しすぎる。

 何の話だっけ。