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布袋の大仏

林家きく麿の「くだらな観音菩薩」 第3回

ちょっとほっとする仏様のオーラ

 凄いと言うと今回の主役、布袋の大仏様ですよ。なんだろう? ふと会いに行きたくなるんです。

 名古屋から犬山線に乗って布袋駅に向かうと見えてくるんですよ、立ち並ぶ木々の上に、ぬぼーっと飛び出したお顔が! もうね、「うわー! 出たー!」ですよ。あの、ぬぼーは!

 あの何をやっても怒らない親戚のおじさんみたいな柔和なお顔立ちと、ピシッとした格好をしているのに、「ズボン履き忘れてました」みたいな脱力感満載の出で立ち、微妙に頭の大きな「顔面暴力の友の会」みたいな様相、もう奇跡としか言いようのないバランスで鎮座されている御姿が飛び出してくると、思わず頬が緩んでしまうんです。

 失礼ながら、癒し系であることこの上もなく、ずるいくらいに面白そうな雰囲気を醸し出しているんです。皆さんの周りにもいるんじゃないですか? 「ボソッと言った一言で笑いを全部掻っ攫っていくよ、あいつ!」「まただよ、そんなに主役になりたいのか、あいつ!」みたいな面白オーラが出ている人が。

 私も落語家なんで、面白い雰囲気を出せるといいなぁと、常に考えているのですが、どうすればいいんでしょうかね。目をもう一回り小さくして、鼻をふた回り大きくして、下がり眉に磨きをかけて、タピオカを飲む時のストローくらいのおちょぼ口になれば、高座に座った時点で、クスクス笑いの起こる面白芸人になれるでしょうか?

 いや、「今でも結構、面白い顔してるよあんた!」と思っているあなた! そう、あなたですよ! 「ありがとうございます。たくさん笑ってね、よろしくお願いします」じゃないよ! じゃなくて、顔かよ!! 面白顔で勝負しようとするなってーの!

 やっぱり、噺で面白くならないとですよね。