2025年7月の最前線(聴講記:神田こなぎ真打昇進披露興行、二ツ目時代、軍談ウィーク。そして「琴調の夏」を前にして)
「講談最前線」 第4回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/07/13
真打に昇進した神田こなぎ。幟ととも(墨亭の前にて)
講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。
聴講記① ~神田こなぎ真打昇進披露興行
2025年の講談協会の慶事といえば、神田こなぎの真打昇進が挙げられよう。
2011年に神田すみれの門を叩き、2016年に二ツ目。入門時にもらった「こなぎ」という名は、出身の山梨県南アルプス市に咲く……のではなく、一門の総意で決められたという。
ちなみに、植物図鑑等によると、コナギは晩夏から晩秋にかけて、青紫色の花を咲かせるミズアオイ科の植物である。……とここまで記してきて、現在のすみれ門下の筆頭弟子が「神田あおい」であることに気付いた。そのあたりは関係があるのかは不明。
昨今のように、まだ前座の数も多くない時代に修業を重ね、苦節14年の新真打の誕生である。
以前は正直言って、とらえどころのないと言えばよいか、ポワーンとした感じの高座であった。ところが真打が決定した後、大好きな新選組を書き下ろしで勉強したいということで、それに乗ってお付き合いしたところ、これまでの隠れた修業の成果が出てきて、物語の中で硬軟をともに読み込み、個性の強い隊員たちの姿を丁寧に描き出してみせた。
また2024年度の「伝承の会」では、宝井一凛から教わった『紺屋高尾』で、その特徴とも言える軟らかな読みで、吉原という舞台での男女の順な恋心を読み上げた。
こなぎの高座は、そうした古典や自作ばかりでなく、このあとにも登場する『女化稲荷(おなばけいなり)の由来』といった演目のように、珍しいネタの掘り起こしに熱心であることも挙げたい。ほかの演じ手が手掛けないネタを自分のものにしていくことで、新しい話が再生されるばかりでなく、そこに演者の個性がまた異なった形で表れてくるだけに、そうした高座姿勢を評価したい。
4月に始まった真打昇進披露興行も、定席や津の守、深川江戸資料館等で賑やかに行われ、5月の向じま墨亭では協会を超えた形で、芸譜では伯父に当たる、日本講談協会相談役の神田愛山も口上に並んだのをはじめ、姉弟子の神田あおい、人気者で来秋の真打昇進が決まっている田辺いちかも顔を連ねた。

田辺いちか、手前に神田愛山、中央にこなぎ
墨亭での二日間の演目は、『恩愛(おんあい)親子餅』と『女化稲荷の由来』。
今後に関しては、「山梨ではなかなか講談自体が身近ではないので、興味を持っていただけるように少しずつ会を始めていきたいと思っています。また、新作ももちろんですが、古典の中でもあまり読まれていない本など、いろいろな話を読んでいきたいと思います」としているだけに、新真打神田こなぎの活躍にぜひ、注目してほしい。神田こなぎは、8月1日~3日の津の守講談会でトリ(主任)を務める。

右は田辺凌天
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