オシャレは落語家を変える

「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回

オシャレは落語家を変える

バレたら破門の危険なオシャレ!?(画:大久保ナオ登)

桂 三四郎

執筆者

桂 三四郎

執筆者プロフィール

神の怒り

数ある芸人、芸能人、表現者の中で、落語家ほど服装に無頓着な人種はいないだろう。

「ダサい」という言葉は、ひと言ですべての人格、センス、人間性が否定される殺傷性の高い言葉だが

落語界ではあまり言われることがない。

なぜならみんな等しく少しずつ服がダサいからだ。

特に、東京よりも大阪の方が服装に無頓着だ。

上方落語の寄席では、「送り出し」という文化があって

終演後にお客様をお見送りする。

出番が終わってからもずっと着物を着続けるのは面倒なので

私服に着替えてお見送りをするのだが

その際、寄席の法被(はっぴ)を着ることを強く推奨されている。

というのも、あまりに噺家が服装に無頓着なので

法被を着ていなかったらお客様とまったく違いがわからないからなのだ。

おじさんが立っているだけにしか見えない。

そこに客席のおじさんが大量に流れ込んでくると

どのおじさんが噺家で、どの噺家がおじさんなのかわからなくなってくる。

そこでパッと見て噺家とわかるおじさんは

お客様よりかなり小汚い格好をしている噺家だ。

別に噺家全員が小汚い格好をしてるわけではなく

おじさんの落語家の中にも、服装に気を遣っているとすぐわかる師匠方もいる。

パッと見、「あ、なかなかいいアウター着ているな」

とか、「あ、この歳でBEAMS(ビームス)で服買ってるんだ」

とか、着替えの時に少し目を引く服装をしているおしゃれな師匠もいるが

そういう師匠はだいたいハゲている。

すごくもったいない。

ハゲているから、帽子もおしゃれだ。

別に誰か特定の人を言っているのではないが

そういう傾向があるのは確かだ。

ハゲているからファッションで補おうと思ったのか

落語家のくせにオシャレをするとは何事だ!!という、“神の怒り”をかってしまったのかはわからない。

まあ強いて言うなら、髪の怒りか……。

ハゲている現実から“頭皮”したのかもしれない。

違う、逃避だ…………。

もちろん、おしゃれな噺家も存在する。

大阪で一番おしゃれなのは、間違いなく笑福亭鶴瓶師匠だ。

テレビに出る落語家で最初にスタイリストをつけたというほどのオシャレさで

その上、おしゃれにかけるお金を心配することがないので

おしゃれな上に質の良い服を着ている。

もちろんハゲている。

ただハゲ方もすごくおしゃれだけど、師匠を見てハゲているとは誰も思わない。

おしゃれすぎてわからないのだ。

桂二葉さんもすごくおしゃれだ。

服装もおしゃれだけど、何かのちょっとのチョイスがすごくおしゃれに感じる。

ダサくても

後輩の笑福亭茶光と、どうやったら売れるのかについて考察を重ねた。

その結果

「おしゃれな人には魅力がある」

という結論に達した。

おしゃれな人は、みんなに憧れられる。

落語「色事根問」に出てくる女の人にモテる条件が

「一見栄、ニ男、三金、四芸……」

というくらい、ファッションセンスは昔から異性を惹きつける一番の項目のようだ。

ただややこしいのが、おしゃれな服を着たら

おしゃれに見えるのかというと、そうではない。

だから、ある噺家がおしゃれな先輩のお下がりをもらって

楽屋入りをしたのだけど

先輩が着たときはものすごくおしゃれな最先端のファッションだったのが

その噺家が着たら、なんかものすごいチグハグさを出して、よりダサく見えた。

ブランド自体はめちゃくちゃおしゃれだったが

着る人によってこうまで違うのかと驚いたことがある。

おしゃれは、積み重ねだ。

ファッションレベル1の人間が、ファッションレベル50の服を着ても

着こなすことはできない。

おそらく「おしゃれ」というのは、内面から出てくるものなのだろう。

ただ、笑いのセンスや芸の質とファッションセンスが比例しているわけではないのが、唯一の救いだ。

服装に無頓着でも、凄まじいセンスで爆笑を取り、圧倒的な芸で観客を魅了する噺家もいる。

かくいう桂三四郎も決しておしゃれではない。

どちらかというと「ダサい」部類に入るのかもしれない。

まったく興味がないわけではないし

スタイルも悪いわけではないので、いろんな服が着こなせないわけではない。

ただ服選びが嫌いすぎるのだ。

基本的に服屋の店員さんが大嫌いで

「その服試着できますよ~」

と話しかけられたら、すぐに店を出るようにしている。

だいたい試着できない服があるわけない。

「きっとこいつは僕のことをカモだと思って、変な服を売りつけにくるつもりだ」

と思ってしまう。

おそらく、昔から服にあまり興味がなかったせいか

「ダサい」と言われた過去のトラウマで

アパレル関係の人間を敵視しているのだろうか。