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芸とともに受け継がれる一門伝統の味

シリーズ「思い出の味」 第25回

芸とともに受け継がれる一門伝統の味

今も思い出す、懐かしい味と、かけがえのない時間の記憶

露の 五九洛

執筆者

露の 五九洛

執筆者プロフィール

「かめちゃぶ」が語る落語のこころ

 「おいわいやす――」

 京都ゆかりの露の一門では、はんなりとした京ことばで「かめちゃぶ」をいただきます。

 芸事のお正月である「事始め」、そして一門の十八番である怪談噺の安全祈願祭「幽霊まつり」に欠かせない「かめちゃぶ」には、二代目・露の五郎兵衛師匠夫妻の歴史とアイデアが込められているのです。

 コトコトと音を立てる鍋をかき混ぜながら、二代目のおかみさんが笑います。

 「お弟子さんたちは美味しい美味しいと喜んで食べてくれるけど、かめちゃぶは、“貧乏どんぶり”やねんで」

 なんでも、かめちゃぶの始まりは歌舞伎界にあり、芸事の吉書(きっしょ:大阪弁で、節目や機会を表す)に質素な食事を摂ることで初心に返り、芸道への精進を誓うものだったといいます。

 そのしきたりを落語界に取り入れたのが、江戸落語の名人、八代目・林家正蔵師匠でした。二代目・五郎兵衛師匠は、正蔵師匠から本格怪談噺を受け継ぎましたが、その稽古の際、正蔵師匠の御自宅で、当時、庶民の味方であった食材のひとつ、牛すじをメインとした丼ぶり「かめちゃぶ」をすすめられたのです。

 それにしても、「かめちゃぶ」とは摩訶不思議なネーミングです。

 一説によると、これは「質素な食事」=「犬が食べるようなご飯」というところから、英語で犬を呼ぶ「Come On」がなまって、「キャモーン」「カメオーン」「カメ……」となり(ホンマ!?)、また「ちゃぶ」は「ちゃぶ台」の「ちゃぶ」だとか、「猫まんま」ならぬ「犬まんま」を表す中国語の「ちゃう」に由来するともいわれています(ホンマにホンマ!?)。

 いずれにしても、「かめちゃぶ」は食材の内容ではなく、質素な食事を表す言葉なのです。