芸とともに受け継がれる一門伝統の味

シリーズ「思い出の味」 第25回

あたたかい一門の味

 江戸で「かめちゃぶ」を知った二代目・五郎兵衛師匠。

 古典落語にも積極的に新しい工夫を取り入れてきたように、この「かめちゃぶ」も、一門の新しい決まり事として取り入れようと考えたのでした。

 そこで、料理を得意とするおかみさんと、料亭の孫として生まれた自身の舌を生かして、露の一門だけの「かめちゃぶ」を生み出したのです。

 そのレシピはというと……?

 まず、適量の玉ねぎを鰹と昆布の出汁で炊き、砂糖、みりん、醤油、酒で味付けます。兵庫県在住ですから、やはり、玉ねぎは甘みたっぷりの「淡路の玉ねぎ」。そして、天かすを入れてひと煮立ちしたところで玉子を入れますが、美味しく作るコツは、この“ひと煮立ち”を待ってから玉子を入れることだといいます。

 二代目は落語の稽古の際、「焦らず、間はしっかりとるんやで」とよく教えてくださいましたが、やはり料理のコツも「間」にあるのですネ。

 玉子で仕上げた玉ねぎをアツアツのご飯にかければ、「かめちゃぶ」の完成です。

 21年前、18歳で入門し、右も左も分からないまま二代目の家で食べた「かめちゃぶ」のあたたかい味は、現在、怪談噺の継承者である私の師匠に受け継がれています。

 先日、三代目・露の五郎を襲名して初めての夏を迎えた我が師匠。「幽霊まつり」のあと台所に立つと、変わらぬ眼差しで「かめちゃぶ」の鍋をかき混ぜました。

 「なかなか二代目の家のような味にはならんけどな、なるべくあの味に近づけるよう、精進あるのみや。そして、自分なりに工夫して、自分の味を作ったらエエんや――」

 そう語る師の背中は、まるで三代目としての意気込みを語っているようでもありました。私はこのとき、弟子として、また大きな学びをいただいたのです。

 ※三代目・露の五郎を襲名……2025年10月24日、二代目・露の五郎兵衛の四番弟子、露の団四郎が「三代目・露の五郎」を襲名した。