優雅な航海中の後悔を公開
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
- 落語
桂 三四郎
2026/04/13
25年前に船上で出会ったおじさん、お元気ですか?(画:大久保ナオ登)
都会の喧騒を忘れて
数多ある落語家の仕事の中で、ずっと行ってみたかった仕事がある。
「豪華客船」の仕事だ。
都会の喧騒を忘れて、豪華客船でゆったり過ごしながら、夜は落語をはじめ、歌やダンス、邦楽など様々なショーを楽しみ、寄港地で思い出を作り、海を眺めながら美味しい食事を楽しむ。
様々な旅行をし尽くした富裕層の遊び ――
それが豪華客船でのクルージング旅行だ。
その豪華客船のエンターテイメントスタッフとして乗船し
優雅に時を過ごしながら落語を楽しんでいただく。
その憧れの仕事に、芸歴21年にしてやっと携わることができた。
1週間近くも豪華客船で優雅に海外に行くお客様だが、どんな人たちなんだろう?
「ごきげんよう~」
「おほほほほ」
「ごきげん麗しゅうございますわ、奥様~」
みたいな天上人を想像していたが、乗船場所が神戸だったこともあって
ほぼ全員が関西弁だった……。
「あかんわ、もう酔うてきたわ」
「いや、まだ船出てへんやん」
「ちゃうねんちゃうねん、二日酔い」
「なんやそれ~(笑)」
豪華客船なので、かなりの額を支払っているので、みんな相当なセレブのはずなのだが
関西弁を聞くと、ものすごく庶民感が出るのは、なぜだろう?
改めて関西弁の親しみやすさを実感した。
夢のような時間
そんな中、初日のステージで
「神戸からのご乗船ということですが、垂水出身なんです~」
と言うと、後でお客様から
「うちも垂水なんです~」
「垂水出身です!!」
「去年、垂水に引っ越してきました!!」
「実家が垂水です」
「私、垂水中学校出身です!!」
「元彼が垂水でした!!」
なぜか僕の地元、垂水関係の人がめちゃくちゃ多かった。
過去のエッセイにも書いたが、僕はなぜこんなに垂水を引き寄せてしまうのだろう。
もういっそ、垂水港発着にすれば良いのに……。
まあ垂水はさておき、その航海中、計4ステージの合間は何をしても自由で、食事も食べ放題、お酒も飲み放題で
ステージの時間以外は、乗船しているお客様とほぼ同じ条件で、船内で自由に船旅を過ごして良いのだ。
もちろん、船内のレクリエーションに参加してもいいし、ほかのショータイムを観てもいいという
ものすごく優雅な仕事だ。
未だかつて、こんなに充実した環境があっただろうか?
普段、楽屋にチーズおかきとクリスタルガイザーがあっただけで小躍りするくらい喜ぶ僕にとっては、まさに夢のような環境だ。

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