落語家の夢
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
- 落語
桂 三四郎
2025/11/27
夢のないやつはいねが~(画:大久保ナオ登)
キラキラの瞳
「すんません!! 兄さんの夢ってなんなんですか?」
後輩の桂九ノ一にまっすぐな瞳で見つめられた時に、僕はものすごく動揺した。
「ユメッテナンデスカ?」
Siriよりも無機質な声で思わず聞き返してしまった僕に、キラキラした瞳で九ノ一はさらに語りかける。
「僕はね!! ハーレーに乗りたいんです!! ハーレーに乗らずして死ぬ噺家人生にはなりたくないんです!!」
熱く語る九ノ一、まだバイクの免許すら取っていない彼は、純粋な気持ちで僕に訴えかける。
「かっこいいじゃないですか!! 欲しいんすよ!! 兄さんはなんかないんすか!?」
と聞かれて思わず考え込んだ。
もともと僕はあまり物欲がない。
全くないわけじゃないけど、そこまで欲しくてたまらなくなる物が思いつかない。
「兄さん、めっちゃ高い時計とか、つけてみてくださいよ!! ロレックスとか!!」
いや、全然興味ない……。
まず腕時計が嫌い……。
重いし、手首がキュッとされてるのがなんだか嫌だ……。
それにものすごく不注意な僕がロレックスなんかつけたら、壁とかにぶつけまくってズルズルになった上に
ぼーっとして、どっかに置き忘れるだろう。
何百万円も出して激烈に嫌な思いをするほど、バカらしいことはない。。。
「なんか昔、欲しかったものとか買いたくないんですか!?」
と聞かれ
「ムカシホシカッタモノ……」
また出来損ないのSiriに戻ってしまった。
やばい。昔欲しかったものも全然思い出せない……。
僕が考えている間も後輩はキラキラと見つめてくる。
後輩の期待している瞳に応えなければいけないと思い、何とか絞り出した答えが
高校の時に先輩が履いていた高級ブーツ「レッドウイング」。
これが欲しいかな?と絞り出したら
「兄さん……小さいっすわ……」
とがっかりされてしまった。
せっかく絞り出した夢を大きい小さいで判別するとは、なんという後輩だろう……。
素敵すぎる
まあ、でも高校生でも背伸びしたら買えるものを43歳の男性が夢というのは確かに小さい。
後輩にがっかりさせてしまうのもなんなので、何かないかと鏡に映った自分を見て
「あ、あの、最近ちょっと疲れ溜まってきて目の下のクマが気になるから、それを除去したいかな……」
と答えてる途中に、もうすでに求められている答えではないことに気がついて
「あ、あの……雪鹿くんは『夢』ってあるかな!?」
と別の後輩に振ってみた。
すると即答で
「僕は、スイスに行きたいです!!」
スイス? 永世中立国の? スイス? ヨーロッパのどこかの国? どこにあるか正確な場所がわからないことでお馴染みの? スイス?
「昔、『世界の車窓から』って番組で見たスイスの登山電車からの風景が美しすぎて、僕は死ぬまでにスイスの風景を生でこの目に焼き付けたいんです!!」
素敵すぎる……。
キラキラと夢を語る桂雪鹿の眩しさに僕は思わず目を細めながら、すぐにネットで「 スイス 旅行 費用 」と調べた自分が嫌になった……。
いま読まれています!
シリーズ「思い出の味」 第21回
レンズ豆のスープ
~若き日、スペインでの空腹、音楽、そして人の優しさを深い余韻とともに描くエッセイ
天中軒 景友
2026/04/17
「くだらな観音菩薩」 第12回
日光菩薩と月光菩薩
~怒りと笑いを行き来しながら、菩薩様のような優しさに辿り着くエッセイ
林家 きく麿
2026/04/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「噺家渡世の余生な噺」 第12回
教える者が、教えられた日
~生徒を裏切った、最後の授業。教える者の責任と弱さを綴る、苦くも温かなエッセイ
柳家 小志ん
2026/04/14
「お恐れながら申し上げます」 第8回
三櫂屋というお店
~仕込み、接客、失敗、反省、すべてが詰まった、扇太さんのリアルな青春バイト譚
入船亭 扇太
2026/04/15
「くだらな観音菩薩」 第11回
閻魔大王
~素敵な人との出会いは、財産だ!
林家 きく麿
2026/03/16
「令和らくご改造計画」
第九話 「地獄のモーニングコール」
~落語家は寝すぎ? 働かなすぎ? 前座が仕掛ける“狂気の作戦”とは!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/04/12
シリーズ「思い出の味」 第11回
食べ物が詰まった、師匠桂三金の思い出と棺桶
~焼肉は落語
桂 笑金
2025/08/17
「座布団の片隅から」 第10回
東京
~自分が人に見せたくないところが商売になるんだよ
三遊亭 好二郎
2026/02/07
古今亭佑輔とメタバースの世界 第8回
VRエンタメの考察
~人を惹きつけるエンタメの3つの要素とは?
古今亭 佑輔
2026/04/05
「令和らくご改造計画」
第九話 「地獄のモーニングコール」
~落語家は寝すぎ? 働かなすぎ? 前座が仕掛ける“狂気の作戦”とは!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/04/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「くだらな観音菩薩」 第12回
日光菩薩と月光菩薩
~怒りと笑いを行き来しながら、菩薩様のような優しさに辿り着くエッセイ
林家 きく麿
2026/04/16
「講談最前線」 第17回
2026年4月の最前線 【後編】 (聴講記:津の守講談会/講談『太閤記』小考①)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/04/12
「噺家渡世の余生な噺」 第12回
教える者が、教えられた日
~生徒を裏切った、最後の授業。教える者の責任と弱さを綴る、苦くも温かなエッセイ
柳家 小志ん
2026/04/14
「お恐れながら申し上げます」 第8回
三櫂屋というお店
~仕込み、接客、失敗、反省、すべてが詰まった、扇太さんのリアルな青春バイト譚
入船亭 扇太
2026/04/15
「講談最前線」 第16回
2026年4月の最前線 【前編】 (講談協会が一般社団法人として始動へ)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/04/11
月刊「シン・道楽亭コラム」 第12回
一粒の麦 ~世界に広がれ、落語の輪 in 名古屋!
~名古屋の演芸文化を支える多彩な人たちの静かな情熱とリアルな声を追ったコラム
シン・道楽亭
2026/04/10
「令和らくご改造計画」
第八話 「酔っ払いにSNSを」
~芸人のSNSは、なぜ自由すぎるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/03/12
シリーズ「思い出の味」 第21回
レンズ豆のスープ
~若き日、スペインでの空腹、音楽、そして人の優しさを深い余韻とともに描くエッセイ
天中軒 景友
2026/04/17
「浪曲案内 連続読み」 第10回
新釈浪曲忠臣蔵 ~202X年赤穂の旅
~忠臣蔵は難しい? そんな先入観を覆す浪曲コラム
東家 一太郎
2026/03/24
「令和らくご改造計画」
第九話 「地獄のモーニングコール」
~落語家は寝すぎ? 働かなすぎ? 前座が仕掛ける“狂気の作戦”とは!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/04/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第31回
映像思考で編む、新世代講談 田辺一記(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/03/28
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第10回
同郷熊本の小学校の先輩! 三遊亭ふう丈 改メ 二代目円丈師匠真打昇進襲名披露パーティー
服部 拓也
2026/03/22
「くだらな観音菩薩」 第12回
日光菩薩と月光菩薩
~怒りと笑いを行き来しながら、菩薩様のような優しさに辿り着くエッセイ
林家 きく麿
2026/04/16
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第12回
お転婆が過ぎると命を落とすこともある
~転んでも前に進む浪曲師の軽やかで楽しい芸人日記!
東家 千春
2026/04/03
「座布団の片隅から」 第12回
地獄
~春風亭㐂いち兄さん、柳家小はだ兄さん、三遊亭歌彦さんと僕でスキーに行ってきたのだが…
三遊亭 好二郎
2026/04/07
「エッセイ的な何か」 第10回
3月8日は、餃子の日 →無茶苦茶、食う男の偉業
~柳亭痴楽師匠と名古屋『百老亭』の思い出
三笑亭 夢丸
2026/03/23
月刊「シン・道楽亭コラム」 第12回
一粒の麦 ~世界に広がれ、落語の輪 in 名古屋!
~名古屋の演芸文化を支える多彩な人たちの静かな情熱とリアルな声を追ったコラム
シン・道楽亭
2026/04/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
シリーズ「思い出の味」 第19回
雪のココア
~内弟子時代に憧れた甘い味
柳家 わさび
2026/01/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第7回
世間せまないか?
~落語家を多数輩出する片田舎、神戸の垂水
桂 三四郎
2026/02/01
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
編集部のオススメ
「浪曲案内 連続読み」 第10回
新釈浪曲忠臣蔵 ~202X年赤穂の旅
~忠臣蔵は難しい? そんな先入観を覆す浪曲コラム
東家 一太郎
2026/03/24
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第11回
〈書評〉 サライ 2026年4月号 (大特集:落語 講談 浪曲 サライの「演芸」 令和の名人)
~人間国宝の鼎談から若手の最前線まで網羅した豪華特集。読むほどに、もっと聴きたくなる!
杉江 松恋
2026/03/19
「噺家渡世の余生な噺」 第11回
手紙 ~拝啓、四十八の君へ~
~来てくださった人の顔を忘れるな。 自分のために頭を下げてくださった人の姿を忘れるな
柳家 小志ん
2026/03/14
「令和らくご改造計画」
第八話 「酔っ払いにSNSを」
~芸人のSNSは、なぜ自由すぎるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/03/12
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第27回
古今東西を自在に読む講釈師 松林伯知(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/03/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第11回
シン・道楽亭Webサイトリニューアル! ほぼほぼAIで作ってみた話
~どんな思いで運営しているのか、どんな場所として受け入れられたいのかをお伝えしたい
シン・道楽亭
2026/03/10
月刊「浪曲つれづれ」 第11回
2026年3月のつれづれ(玉川太福の受賞、玉川奈々福の徹底天保水滸伝、『深夜食堂』&『陰陽師』の浪曲化)
~スターの活躍と新しい挑戦が交差する、いまの浪曲界をご紹介
杉江 松恋
2026/03/09
「二藍の文箱」 第10回
かたばみ日記 ~初主任の十日間
~高座と人生が交差する、濃密で温かい日々の舞台裏
三遊亭 司
2026/03/02
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25