一途に講談を生きる 田辺いちか(後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第43回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/07/16
尊敬する大先輩、神田愛山と(向じま墨亭にて)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。〈田辺いちか先生の前編/中編/後編のうちの後編〉
身体が4つほしい
―― では、これから取り組んでいきたいという話は……、やはり今は余裕がないですよね。
いちか 考えている余裕はないんですが、とにかくネタを増やしたいですし、講談を読みたくて仕方がありません。
―― 私はいちかさんの連続物を聴きたいとずっと思っています。『安政三組盃(あんせいみつぐみのさかずき)』は連続で聴いてきましたが、その他の連続物です。
いちか それは絶対にやらなくてはいけないんですが、今はいただいた様々な現場に対応できるよう、自分が果たせる役割にふさわしい話を作っているところです。自然、今は一席ものが多くなってしまうのですが、昨年『東海道四谷怪談』を連続で読んで、ものすごく楽しかった。もちろん、それも最初の台本からいろいろと変えさせていただいて読みました。
―― 田辺派の教えの一つですから、その姿勢は大切です(笑)。
いちか あのお話も芝居だから成立するといった場面もあります。それに各幕によって作者が異なるんではないかという説もあります。確かに伊右衛門のキャラが幕ごとに異なったりしますし、どうやったらそれをお客さんに納得してもらえる筋にできるか。それを話芸で聴かせられるかと考え続けました。
そんな時に木ノ下歌舞伎をご覧になった方の感想を目にする機会があって、こういう感想が出るということは、こういう演出の方がいいのではないかなどと逆算して考えて、それだったら現代のお客さんにも伝わるんだと思って、本をもう一度読み直して、3ヵ月くらいかけて、前回やった時とキャラをギリギリのタイミングまで変えて読みました。それはそれは大変で。
でも、連続物に夢中になっていると、よそでできるネタが増えないんですよ。速記から起こしても高座で頻繁に使えるネタとなると、10覚えた中で3つくらいになってしまう。だから、身体が4つくらいほしい!と思っています。連続物をやる自分、新作を作る自分、普通に講談をやる自分、営業用の自分(笑)。全部捨てたくはないので、何とか順番でもって、頭が老化しないようにと思っています。
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