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一途に講談を生きる 田辺いちか(後編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第43回

一途に講談を生きる 田辺いちか(後編)

尊敬する大先輩、神田愛山と(向じま墨亭にて)

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

執筆者プロフィール

身体が4つほしい

いちか 考えている余裕はないんですが、とにかくネタを増やしたいですし、講談を読みたくて仕方がありません。

いちか それは絶対にやらなくてはいけないんですが、今はいただいた様々な現場に対応できるよう、自分が果たせる役割にふさわしい話を作っているところです。自然、今は一席ものが多くなってしまうのですが、昨年『東海道四谷怪談』を連続で読んで、ものすごく楽しかった。もちろん、それも最初の台本からいろいろと変えさせていただいて読みました。

いちか あのお話も芝居だから成立するといった場面もあります。それに各幕によって作者が異なるんではないかという説もあります。確かに伊右衛門のキャラが幕ごとに異なったりしますし、どうやったらそれをお客さんに納得してもらえる筋にできるか。それを話芸で聴かせられるかと考え続けました。

 そんな時に木ノ下歌舞伎をご覧になった方の感想を目にする機会があって、こういう感想が出るということは、こういう演出の方がいいのではないかなどと逆算して考えて、それだったら現代のお客さんにも伝わるんだと思って、本をもう一度読み直して、3ヵ月くらいかけて、前回やった時とキャラをギリギリのタイミングまで変えて読みました。それはそれは大変で。

 でも、連続物に夢中になっていると、よそでできるネタが増えないんですよ。速記から起こしても高座で頻繁に使えるネタとなると、10覚えた中で3つくらいになってしまう。だから、身体が4つくらいほしい!と思っています。連続物をやる自分、新作を作る自分、普通に講談をやる自分、営業用の自分(笑)。全部捨てたくはないので、何とか順番でもって、頭が老化しないようにと思っています。