優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/11/29
田辺一邑 近影(講談協会HPより)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。(田辺一邑先生の前編/中編/後編のうちの前編)
伝説の講釈師・田辺一鶴
昭和から平成にかけて講談界の話題をさらい続けた講釈師として、今や伝説の人物(?)である田辺一鶴(たなべいっかく、1929年~2009年)を思い出す人も多いだろう。軍談修羅場(ぐんだんしゅらば)を取り入れての『東京オリンピック』や、エルヴィス・プレスリーの名曲をアレンジして自ら歌った『ポークサラダ兄ィ』。テレビやラジオにとどまらず、海外公演も行ったりと、その活動はまさに縦横無尽であった。
その一鶴が鬼籍に入って早16年。この12月に一門の弟子たちが集まって追善の講談会を開くという。そこで一門の高弟である田辺一邑(たなべいちゆう)に師匠の思い出、そして講談に対する思いなどを尋ねてみた。そう、一鶴はまた、女性講釈師を積極的に講談の世界へ呼び込んだ立役者の一人でもある。
まずは、田辺一邑入門前の話から。
―― 今年は田辺一鶴先生の17回忌です。早いですね。私も先生にはいろいろとお世話になりました。
一邑 お世話したほうではないんですか(笑)。
――(笑)。その頃、ある日本文化に関する商品開発に携わっていまして、先生に宣伝部長になっていただいたんです。何が凄いといって、ロサンゼルスだったと思うんですが、決して安くない商品なのに、百、二百と売ってきていただいたので、お世話になったほうかと。
でも、夜中に電話を掛けてきて、「NHKの『講談大会』で『名医と名優』を読むことになったから、その途中の道中付けを考えたので聴いてくれ!」って。一時間くらいでしたか、聴かせるだけ聴かせて、それで満足されたのか、「それでは」って(笑)。
一邑 その節には、師匠が大変にお世話になりました(笑)。師匠はいつもそうなんです。「一邑君、明日、何時から何々という番組があるから録画しておいてくれ」ガチャン!って、自分の用件だけ話すと切ってしまうんです。

―― そんな思い出の多い一鶴先生に入門されたきっかけを教えてください。
一邑 バブルの絶頂期に心身ともに疲れて会社を辞めて、好きなことをしようと思って、朗読や大衆演劇のワークショップをやったりして、その時に講談を聴きに行ったのがきっかけです。
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