2026年7月の最前線 【前編】 (講談界の襲名について考える)

「講談最前線」 第22回

2026年7月の最前線 【前編】 (講談界の襲名について考える)

人間国宝であった一龍斎貞水が真打に昇進した際の口上書(向じま墨亭・蔵)

瀧口 雅仁

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瀧口 雅仁

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 講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。〈2026年7月の【前編】〉。

講談三景

 7月の「講談最前線」は、講談界における改名と襲名についての一考、講談協会定席の聴講記、そしていよいよ豊臣秀吉が天下取りを目指し始める大河ドラマ『豊臣兄弟!』を前に、フィクションたる『太閤記』がどんな展開を持った物語であるのかを紹介する。

 まずは講談界での襲名について考えてみたい。

財産たる名跡

 落語界ではこのところ、春風亭柳枝、松柳亭鶴枝、華形家八百八といった、久々に復活した名の襲名があり、来春(2027年)には三遊亭圓左、来々秋には柳亭痴楽といった落語界の財産たる名前もまた、それに続くように復活する。

 講談界でも、神田伯山(かんだはくざん)をはじめ、松林伯知(しょうりんはくち)、宝井琴凌(たからいきんりょう)といった名前が真打昇進とともに生まれたが、ここ近年、10年20年という単位で振り返ってみた時に襲名の話を耳にすることはあまりなかった。

 落語家と比べれば、その人数の違いこそあれ、講談界には大きな名前や、響きや字面的に“らしい”名前も多いので、条件やタイミングが揃えば、そうした名を襲っていってもらいたい。襲名はまた、業界の注目度が高まり、活性化にもつながる。

 当ウェブの7月の女性講釈師インタビューで、今秋、真打に昇進する田辺いちかに話を聞き、「いちかさんであれば何か大きな名前を継げたのではないか」という質問を投げ掛けた。それに対し、いちか本人が田辺派の女性講釈師にはいい名前がないこと、また襲名となれば大きなイベントでもあり、そうしたお祭りはまた別に機会を設けてもいいといったような話になった。

 前者で言えば、女性講釈師が今世のような活躍を見せ始めたのは、ここ50年ちょっとのことであり、男性講釈師が名乗ってきた名前はあったが、となれば、どうしても堅苦しい名前が多く(男性、女性と分けるつもりはないが。以下同)、ならば芸が熟してきて、そうした名前が似合うようになってきた時に名乗るのもありだろう。

 例えば、蓁々斎桃葉(しんしんさいとうよう)や、貞心一門が読む講談にも登場する桃林亭東玉(とうりんていとうぎょく)といった名前は、女性講釈師にも似合う名前のような気がする。もちろん流派であったり、芸譜といったものを考慮に入れる必要はあるが、だ。