2026年8月のつれづれ(「浪曲 陰陽師 迷神・打臥の巫女」、「浪曲 巷説百物語 芝右衛門狸」、港家小ゆきの挑戦)
月刊「浪曲つれづれ」 第15回
- 浪曲
杉江 松恋
2026/08/15
7月25日に開催された「浪曲 陰陽師 迷神・打臥の巫女」小田原公演(撮影・橘蓮二)
龍笛が誘う平安の闇「浪曲 陰陽師 迷神・打臥の巫女」
浪曲は初めて聴きます、という方が今回も大勢詰めかけた初演だった。
2026年7月25日、小田原三の丸ホールに「浪曲 陰陽師」が戻ってきたのである。天中軒すみれ・広沢美舟のコンビは、2025(令和7)年から「夢枕獏・原作 浪曲 陰陽師」に精力的に取り組んでいる。昨年は、原作の第1話を元にした「琵琶玄象」に挑戦、初演は夢枕獏氏のお膝元である小田原三の丸ホールであった。その後、北区王子の北とぴあ・ペガサスホールで初の東京公演を行った。
2年目の今年は、原作『陰陽師 付喪神ノ巻』(文春文庫)から、「迷神(まどわしがみ)」「打臥(うちふし)の巫女」の2席を浪曲化した(以上、すべて台本は杉江松恋)。
「迷神」「打臥の巫女」を選んだのは、主人公・安倍晴明(あべのせいめい)最大のライバルであり理解者でもある、蘆屋道満(あしやどうまん)初登場篇だからである。今年は1986(昭和61)年に連載が開始された原作『陰陽師』40周年にあたる。それを記念して、原作より蘆屋道満登場作のみを集めた『黒い陰陽師』(文春文庫)も刊行されている。

天中軒すみれの「浪曲 陰陽師」は烏帽子(えぼし)に狩衣(かりぎぬ)という平安貴族の衣装に身を包み、通常の浪曲で用いられるテーブルを置かず、一人芝居のような形で行われる。衣装はコスチュームプレーを意図したものではなく、より平安の幽玄美を楽しんでもらうための舞台装置だ、とはすみれの弁である。昨年の公演ではスタンドマイクを使ったのだが、今年はヘッドセットマイクを活用し、より自由に舞台の上を動き回ることができた。
もう一つの試みは、雅楽奏者の〆野護元(しめのもりゆき)を招き、演目の要所に龍笛(りゅうてき)を入れたことである。原作の『陰陽師』では、安倍晴明と並ぶ主人公として源博雅(みなもとのひろまさ)が登場する。この博雅が笛の名手なのである。特に「迷神」「打臥の巫女」の2話では笛が物語の大事な要素になっていることもあり、〆野の笛が大いに舞台を盛り上げた。
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