オシャレは落語家を変える
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
- 落語
桂 三四郎
2026/06/28
まさかの招集
僕が修業中、師匠には最大4人の弟子がついていた。
三四郎
三の丸
三段
三昌
この中で三段、三昌の二人は社会人経験があるので
その時に買った服なのか、蓄えの中から買った服なのか
割と綺麗な身なりをしていた。
問題は、三四郎と三の丸だ。
僕は学生時代に買ったヨレヨレの服かユニクロの服
三の丸に至っては学生時代に買ったであろうヨレヨレの服だけでなく
今で言う風呂キャン界隈の上に、洗濯キャンセル界隈で
洗濯しない服を着た風呂キャン三の丸からは、ものすごい異臭が漂ってた。
夏は逆にまだ良い。
汗をかくのでシャワーを浴びる回数が増えるし、びちゃびちゃのTシャツは着心地が悪い。
いやがおうにも、洗濯しないわけにはいかない。
問題は冬だ。
汗をかかず、服の汚れにも気が付かないまま、洗濯風呂キャンが数日続いたときに師匠の付き人で大忙しの日に当たってしまったら大変なことになる。
弟子は汗だくで大量の荷物を持って駆けずり回る。
ダウンジャケットを脱ぐヒマもないくらい、汗だくで走り回っている。
三の丸も汗だくになって走り回っていると
外の寒さとの温度差で次第に肩から湯気があがってくるのだけど
その湯気がめちゃくちゃ臭い!!
いつの間にか弟弟子は、臭い湯気を出す加湿器と化している!!!
「いや、いい仕事しましたなあ」
と、汗をかく三の丸の背中には、臭い陽炎(かげろう)が揺れていた。
もちろん、そんな弟子が怒られないほど、うちの一門は甘くない。
弟子の中で唯一師匠から
「ちゃんと風呂に入って、歯を磨け!!」
とお父さんに怒られるような叱責を受けていた。
まあ修業中は、僕も三の丸も小汚い格好をしていたのは間違いない。
だが、そんな僕たちでも異性の目は気になる。
ある日、師匠が地方に泊まりの時、先輩噺家から電話があった。
「おう、今何してんねん? 梅田で合コンしてるねんけど一人足らんねん!! 来てくれ!!」
基本的に修業中は「酒・タバコ・女」、この3つが禁じられている。
だいたい修業中の弟子を合コンに誘うのも、まあまあやばいことだ。
普通なら「修業中なんで……」と断るのが筋だ。
しかし芸人の合コンである……。
女の子を笑わせて笑わせて盛り上げて仲良くなるという、よくテレビとかで言われていたやつだ。
落語家になって舞台なんかほとんど上がる機会がなく
師匠にもハマらず腐っていた僕には
先輩から誘われた合コンの誘いを断ることはできなかった。
ただし、女性と遊ぶ場所に来ていく服がなかった。
どうしよう、ダサいと思われたくない。
僕の服はヨレヨレのダサダサだ。
嫌だ。
ダサいと思われたくない。
嫌だ……。
どうしよう……。
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