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「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第3回
- 講談
- Books
杉江 松恋
2025/07/19
講談界の分裂と融合
『講談研究』1974年4月号に「講談界の現状」という文章が載っている。同誌の発行人でもあった講談研究家の田邊孝治によるもので、当時講談協会と日本講談協会に分裂していた関東の講談師が香盤順に名前を挙げられている。日本講談協会の末座に名前があるのが神田一陽、前座時代の神田愛山である。
一陽のすぐ上にいる田辺益小美(益子美が正しい。読み方はますこみ)は田辺一鶴門下で、現在は田辺一門を離れて桃川鶴女を名乗っている。
私が聞き書きを担当した桃川鶴女『鶴女の恩返し 師匠田辺一鶴へ弟子鶴女が贈る涙と笑いの講談道』(扶桑社)には、昭和講談界が辿った分離合併の経緯が可能な限り公平な視点で綴られているので、関心ある方はぜひご一読を。
ちなみに『講談研究』は一鶴の師匠である十二代目田辺南鶴が創刊した雑誌だが、没後に田邊孝治が引き継いだ。田辺と田邊で旧字なだけで同じだが、この人は講談師ではない。紛らわしくて私も初めは間違えていた。
二ツ目昇進と鬱屈の日々
前座を3年3ヶ月やり、二ツ目昇進は1957年5月だった。ほぼ同期の、益子美と同時である。ようやく前座修業からは解放されたわけだが、一陽にとって貧苦に喘ぐ日々は終わらなかった。鬱屈の種も振り積もっていた。その苦痛を和らげるため、麻酔のようにして酒を飲んでいたわけである。
本書にも当時の心境が語られているが、許せなかったことの一つとして、講談奨励賞が弟弟子の神田山裕に与えられたことだったと書かれている。
前年に目覚ましい活動をした講談師に対し新年に送られるもので、前述の田邊孝治や阿部主計ら講談研究家が選定していた。これを自分ではなく弟弟子が獲った、という嘆きである。
山裕が山陽に入門したのは1975年10月で、一陽より2年近く遅い。入門前に演芸評論家の小島貞二に師事していたらしく、早くから注目されていたらしい。講談奨励賞を与えられた1979年1月には、まだ前座である。
二ツ目が前座に負けたら、それは悔しいだろう。その他のいろいろなことも降り積もり、一陽は酒に溺れていくのである。
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