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〈書評〉 神田愛山半生記 愛山取扱説明書 (神田愛山 著・瀧口雅仁 聞き手)

杉江松恋の「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第3回

社会の底から見つめる人生観

 『神田愛山半生記』巻末には「神田愛山取扱説明書50のQ&A」が掲載されている。その中で好きな本、愛読書を問われ、「結城昌治に吉村昭。小説家はこの二人で充分です」と愛山は答えた。二人とも、余計なものをそぎ落とした、強い視点を持った作家である。

 特に結城昌治は、一人称一視点の探偵小説を日本に定着させた功労者だ。そうした小説形式を狭義にハードボイルドと呼ぶが、広義ではそれに留まらず社会と個人との関わりを硬質な文体で書いたものを言うことも多い。

 愛山はその、ハードボイルドを実践した稀有な芸人なのだと思う。単なるファッションではなく、自分自身が社会の底に落ち、人間とは何かを見つめる体験をしたからこそ辿り着いたスタイルだ。本書を読んで、私はそれを確信した。

(以上、敬称略)

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  • 書名 : 神田愛山半生記 愛山取扱説明書
  • 著者 : 神田愛山・瀧口雅仁(聞き手)
  • 出版社 : 田畑書店
  • 書店発売日 : 2025/6/20
  • ISBN : 9784803804720
  • 判型・ページ数 : A5判・184ページ
  • 定価 : 1,980円(本体1,800円+税10%)

現在は絶版
 
  • 書名 : 酒とバカの日々 アル中からの脱出
  • 著者 : 神田愛山
  • 出版社 : 木耳社
  • 書店発売日 : 1989/4
  • ISBN : 9784839364823
  • 判型・ページ数 : B6判・264ページ
  • 定価 : ―

(毎月19日頃、掲載予定)