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インド感動旅日記
「ラルテの、てんてこ舞い」 第2回
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アレが一番好き! スゴク美味しい!
せっかくのインドである。この際、いろいろ体験しようと心に決めていた。リキシャにも乗った。片言の日本語を喋る、チャラいお兄さんのリキシャを選んだ。
「オネーサン、キレイね。インドの〇〇っていう女優さんに似てるよ」
「またまた~、冗談でしょう」
「ホント、ホント、インド人、ウソつかない」
ホントか?と思いながら女優に似てると言われて嫌な気はしない。ついついチップも弾んでしまう。リキシャに乗ったのは私だが、ノラされているのは完全に私だ。
インド滞在も数日経つと、ツアー参加者が劇的に減ってくる。
世界中にボーイフレンドがいるという何年も経理部から離れらない有閑マダムもウイスキーの氷にあたって腹を下し、金ならナンボでもあるという全身、ブランドで固めた名古屋のヤンキーカップルも「もうカレーは見たくない」という理由で乗車拒否。そんな中、嬉々としてインドを楽しんでいる私はガイドに気に入られた。
タイガージェットシンに似た、恰幅の良いツアーガイドは、実は富裕層であった。
正業は不動産業に、中古車販売、食品の卸など手広い商売で成功しているらしい。この「シン」さんだったか「ジャイ」さんだったか、そんな名前だった気がするが、とにかく彼は日本が大好きで何度も家族と日本を訪れているらしい。
当然、東京ディズニーランドや富士山、浅草観光、京都の寺巡りはもちろんのこと、北海道から沖縄までくまなく旅したというのだ。「鵜飼い」まで知っているとは、もはや日本人より通である。
そんな彼に日本で一番好きな食べ物を聞いてみた。
「ニッポンの食べ物? ヤキソバ、テンプラ、ラーメン……
う~ん、みんなオイシイ」
「その中で一番、好きなものは何?」
「そうね、そうそう、アレが一番好き! スゴク美味しい!」
「だから、何?」
「ニッシンカップヌードル、カレー味!」
えっ? いやいや、それは嘘でしょう?と思ったが、その後の彼の思いが熱かった。インドにはカレーはあるが、それをヌードルにしてインスタントで食べるという発想がない。画期的らしい!
どうやら好きすぎて、空便では持っていけない量を大量に買い込み、船便で送り、届いた時には親戚一同を集めてパーティをするらしい。
「ホント、美味しい! あなた、あそこの土地が空いてるから、そこで日清カップヌードルの店をやったらいい! 絶対に売れるね! 僕、応援します!」
と、まで言った。「そうか、そこまで言うなら」と、空き地を見ながら軽く想像してみた。