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インド感動旅日記

「ラルテの、てんてこ舞い」 第2回

オイルまみれで悟りかけた午後

 インドには、「アーユルヴェーダ」という世界最古の伝統医療がある。

 「せっかくなので体験したい」と、シンさんだったかジャイさんだったか、ガイドに相談してみたところ、ニューデリーにも体験できる所があると言うので、連れて行ってもらった。

 「ここからは女性のみしか入れない、頑張って! 〇〇時までには戻ってきてね」

 と促され、案内されたのが、都会でありながら洞窟のような場所だった。薄暗い部屋の中には、サリーを着た女性たちが待機しており、服はすべて脱ぎ、「これを履きなさい」と紙パンツをもらった。ほぼ、紙パンツだけになった半裸の私は実験台のようなベッドに仰向けに寝かされ、その周りを数人の女性たちが右に二周、左に三周くらい、ゆっくりと廻るのだ。

 「な、なに? これは何かの宗教?」

 今さら後悔しても、もう遅い。その儀式が終わると、天秤のような銅皿から頭に生温かい油(多分、ハーブ系オイル)が糸のように垂らされ、そのオイルで女性たちが全身の血流に沿ってマッサージをしてくれる。それがかなり気持ちよく、気づいた時には私は心地よく眠っていた。

 終了の合図を聞き、起き上がった時には、私は髪の毛から足の先まですっかりオイルまみれになっていた。なにか拭く物はないかと聞いたところ、ホリの深い女性たちの顔が一段と厳しくなり、何てことを言うのだ、このオイルを拭いてしまったら何の効果もない、せめて明日の朝までは絶対に拭いてはならない、なんなら「拭いたら死ぬよ!」くらいの勢いで厳しく注意された。

 仕方がない、そのオイルまみれの身体に服を着て、私はバスに向かった。

 インドは暑いのである。虫も多い。オイルまみれの身体には、沢山の虫が寄ってくる。強烈な太陽は、オイルを浴びた身体をジリジリと焼いてくる。フライパンで焼かれている状態に近い。虫を蹴散らしながら、それでも何とかバスに乗り込むと、そのかなり個性的な面々はオイルに浸かった私を見て吹き出し、ゲラゲラと笑った。

 悔しいけど、逆の立場ならそりゃあ面白いだろう。泣けてくるけど、こんな体験はインドならではだ! 私は随分と前向きな性格になっている。