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七月のテーマ・ラーメンの日
三笑亭夢丸の「エッセイ的な何か」 第2回
- 連載
- 落語
スープの底に沈めた若気の至り
15年以上前か、このアパートで、今の桂伸衛門さんと明け方までベロベロに飲んだ。昼前に目を覚まし、二日酔い気味ではあるが「何か腹に入れよう」ということになり、初めて件のラーメン屋に入る。
「無料で大盛りにできますが、どうします?」
もう、血気盛んな我々、「この挑戦状を受けずして、何の若者か!」とばかりに、迷わず大盛りをオーダー。そう、この店のキャッチフレーズをすっかり失念しており……。
数分後……。
ドジャーン!!
もう、嫌がらせかと思うような、えげつない盛り付け。もやしも高々と、そして憎々しげにそびえ立っている。『なっとくのボリューム!』と謳ってはいるが、ボリュームがあり過ぎて、逆に納得いかないという怪現象。
二日酔いの我々、このビジュアルだけで卒倒しそうになってしまった。しかし、大盛りを頼んだ以上、残す訳にはいかない。もう、意地である。倒れそうになりながら平らげた。
伸衛門さんも「兄さん……コレ、無理です……」と小声で告げながらも、スープギリギリに、食えない部分を沈めて隠蔽するという荒業を使い、どうにかこの難局を切り抜けたのだった。
その後、再び入店することはなかった。行って「この間、スープの下に食いきれない部分隠してただろ!」と怒られるのも嫌だったから。まあ、実際そんなことはなかろうが。
その後、しばらくして、その店は消えていた。