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はにかんで道中記

東家一太郎の「浪曲案内 連続読み」 第3回

浪曲が結ぶ人と街

 今回で函館での公演は6回目ですが、碧血会の皆様のお力で、碧血碑前慰霊祭で浪曲を務めさせていただいたり、年々嬉しいご縁が広がって来ています。

 でも、そんな長期間どこへ泊まってるの? インバウンドの外国人も多いから函館のホテル代も高いんじゃないの? そんな私たちの面倒を見てくださり、お宅に泊めてくださるスーパーマンがサイトウさん。しかも今回は、東京から来てくれたお客様2名もご一緒。函館や札幌も案内してくださいました。

 サイトウさんとの出会いは、木馬亭での三橋美智也ファンクラブ「みちや会」の集まりです。中島廉売での最初の浪曲会もご主催いただき、今回も湯川の会を開いてくださいました。「一宿一飯の恩義」どころか「多宿多飯」、函館に足を向けて寝られません。

 そして、今回は函館だけでなく初の札幌公演までお世話してくださいましたのは、碧血会の事務局長でいらっしゃるフクシマさん。1つの会を主催いただくだけでも大変なのに、6公演もお世話していただきました。演者がいても、主催してくださる方とお客様がいなくては、浪曲も何もできません。まして、遠い旅先の土地で面倒を見てくださるご存在は、まさに神です!

 ほかにも沢山の皆様にお世話になって、浪曲をさせていただきました。

 函館 蔦屋書店さんは、函館での一太郎・美のホームグラウンド。本だけでなく色んなショップやカフェがあり、イベントも沢山開催されている大きくてとても素敵な書店です。

函館蔦屋書店さんのステージ前で

 札幌初日の会場、豊平館(ほうへいかん)は北海道開拓使直営の洋風ホテルだったそうで、現存する木造ホテルとしては最古という、白とウルトラマリンブルーの外観のなんとも綺麗な建物。浪曲を披露した椿の間、なんと天皇がお着替えになった場所。札幌市民に結婚式場としても大人気だったそうで、サイトウさんもここで結婚式を挙げられたとのこと。ご縁にびっくり!

 この豊平館を手がけた大工・大岡助右衛門(おおおかすけえもん)という人が、柳川熊吉と、スケさん、クマさんと呼び合うほどの兄弟分でありました。そして旧幕府軍の戦死者埋葬を指揮したのは、熊吉と助右衛門、実行寺住職・日隆の3人だったそうです。札幌で大岡助右衛門のお墓参りもできました。

 義理人情に厚い、義侠心を持った柳川熊吉と大岡助右衛門の二人が今回も大変お世話になったサイトウさんとフクシマさんのお姿と重なり合って感じられ、碧血碑について、この浪曲について、さらに深く学ぶことができたと実感しています。