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エッセイが始まる

桂三四郎の「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第1回

エッセイが始まる

素晴らしい作品を作るためには……(画:大久保ナオ登)

桂 三四郎

執筆者

桂 三四郎

執筆者プロフィール

出版ちゃうやん、それ発注やん

ある日、HPに届いたメールに書いてある内容を見た時、「あ、またきたな」と思った。

落語家を長くやってると、年に何回か文章を書く仕事のオファーがあったりする。

昔からブログやSNSに長文を載せているので、文章を書くのは好きな方だ。

面白いと言ってもらえたら嬉しいし、告知の際は、長文の熱いメッセージの最後に巧妙に告知文章をねじ込んでいるのだけど、

これは感動のドキュメンタリーの最後に青汁のCMが入るという

「世田谷自然食品方式」を駆使して宣伝活動に努めている。

もう今やその手法は世の中に知れ渡ってしまっていて、大村崑さんがテレビに映るたび、

「大村崑さん、今度は何のCMやろ?」

とネタバレしてしまっている。

だから、僕の長文の投稿もほぼ告知だとバレているので、効果があるのかないのかわからなくなっている。

しかしやらないよりマシだ、この熱い文章に騙され……、いや心動かされる人がいるかもしれない。

年々減っていく「いいね」の数。

頭打ちになってしまったフォロワー数。

いつまで東京に進出してきた時の苦労話を引っ張り続けるんだという自分との葛藤。

有名人と撮った写真にだけやたらと「いいね」がつく哀しさ。

日々心をすり減らしながら文章を書いている。

たまに心が折れそうになる。。

そんな日々を救ってくれたのがこの

青汁でした。

いや、こんなところで「世田谷自然食品方式」を披露してる場合じゃないのだけど、

とにかく文章を書くのは好きで、いつか文章を書くことが仕事になればいいなと思っていた。

そこで、今回の「エッセイを書いていただけませんか?」というオファーである。

すごく嬉しいオファーなのだけど、

今まで、「エッセイ書きませんかオファー」のそのほとんどが

「本を出版して見ませんか? 本のデザイン、装丁、出版まで全てこちらでやりますので、出版した本を2000冊買取いただく契約ですがいかがですか?」

それ、出版ちゃうやん、ただの発注やん……。

こんな話だった。

まあ、そんな話に騙されることなく落語家生活を21年も送ってきたのだけど、

今回はWebサイトへの投稿で、ほかの落語家もたくさん寄稿しているという。

「落語会に伺ったところ、三四郎師匠のまくらがとても面白くて、まくらが面白い三四郎師匠ならきっと素晴らしいエッセイを書いていただけるのではと思いまして」

この殺し文句にニヤニヤ笑いを噛み殺しながら、なんかちょっと迷ってる風を装いながら引き受けることにした。

あ、どうも初めまして今月から連載させていただくことになりました、桂三四郎です。

落語家やってます。

いや、どのタイミングで自己紹介しとんねん。