ここもカフェ?と思って見ると美容院

朝橘目線 第1回

やよい軒のあの機械

 まあ、それだけカフェ需要があるってことなんだろう。現代社会は、やれ忙しいの、時間が足りないの、タイパがどうのこうのなわけで。つかの間のほっと一息を、最高の一杯と共に過ごしたいという気持ちは、わからんでもない。

 先日、珍しく妻にカフェに行こうと誘われたので、のこのこ同行した。自宅前の路地を歩いてすぐぶつかる大通り、その向こう側にあるカフェ。我が家から一番近いカフェだと思う。そこがまた独特で、コーヒーを頼むとカップを渡されて、それを小型の液晶がついた蛇口の下に置くと、コーヒーが注がれる。無機質な提供なんだけど、妙におしゃれで不思議な気持ちになる。

 やよい軒で白米おかわりする時に利用する、あの機械、給湯器みたいな形のあれに茶碗置いて、盛る量決めてボタン押すと、上からご飯がボトボト(もうこれ以上のボトボトはないってくらい、ボトボトという表現が合う)落ちてくるあれと同じなのに、全然雰囲気違うのが面白い。

 やよい軒のは、おしゃれ0%。でも私はあの機械、初見で惚れた。自分でよそうシステムは、もう衛生面で限界だったのよ。手を洗わずに触る人もいるんだろうし、何なら妖怪しゃもじペロペロが出没してもおかしくないご時世だから。そういう不安を完璧に取り除いてくれるやよい軒。しかも、あのボトボト盛りがちょうどふわっとご飯になるのよ。結婚して行く機会減ったけど、やよい軒、俺はお前のこと忘れてないからな。

 また話がずれた……。

モジモジする私

 とにかく妻に誘われ、久しぶりにああいうおしゃれカフェに行った。私はコーヒーの味を確かめ、それが十分価格に見合う味であると納得した上でさっさと飲もうとしたが、妻はコーヒーにも、ましてや自分のだけ頼んだバナナの美味しそうなケーキにもなかなか手を伸ばさない。そして、私に話を振る。

 家で子どもがご飯の時に喋ってたら「お話してないで、早く食べなさい!」って言う人と同一人物とは思えない。大人ってずるい、はふりかけだけじゃないのか。

 せっかくお店側が良い感じの一杯を提供してくれてるのに、それよりご歓談って。パッと飲んでちゃっちゃと食って、ごっそさん!って店出て次の行動に移りたい自分は、ひたすらモジモジしていた。でも、あちこちのカフェ見てると、お客様は大体そういうスローライフな気がする。

 カフェ側の意見聴きたい。どう思ってるんだろう? 「あー、今の一杯、マジパーフェクトドリップだったのに、全然飲まねえじゃんこいつ、マジありえねえ」みたいに眉間に皺寄せてるのかしら。「いやあ、こんなにカフェだらけの街でわざわざ当店にご来店くださったんですから、コーヒー冷め冷め、スイーツカピカピでも大丈夫ですぅ」な店もあるのかな。

 いや、この卑屈さは、あの空間には存在しないな。