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まだ知らない楽しいエンタメがあなたを待っています!

ピン芸人・服部拓也の「エンタメを抱きしめて」 第1回

芸人超過多時代

 私は、まがりなりにも大阪と東京で合わせて20年ほど活動しているのですが、当時500人いた同期は現在40人も残っていません。お笑いを始めた2006年頃、若手お笑い芸人はテレビなどの大手メディアに出て、全国的に知られ仕事が増える、いわゆる“売れる”という状態にならなければ食べていけませんでした。

 しかし、ここ数年で配信の文化が定着し、テレビなどで活躍せずとも、ライブのみでも一定の収益が発生し、新しい活動スタイルが生まれています。特にお笑い王国・吉本では、劇場が各地にあり、さらに配信もあるため、2~3年目の若手でもバイトをせずに、芸事のみで活動できているという良き話も聞きます。

 ただし、ほかのお笑い事務所のほとんどが常設の劇場を持っておらず、ライブハウスなどを借りてライブを行い、そこで皆、芸を磨いています。私を含めて、おそらくカテゴライズされるだろう「地下芸人」というメディアに引っかからない無名・マイナー芸人にも、面白い人は本当にたくさんいます。ちなみに地下芸人は、自分たちでお金を出し合い、区の施設の集会所などでもライブを行ったりします。

 漫才の大会「M-1グランプリ」で活躍し、メディアに引っかかれば一気にメジャー芸人になることも夢ではありませんが、決勝進出できるのは10組。なかなか厳しく、去年のM-1の出場者数は1万330組でした。

 いや、どれだけ芸人いるんだ!(笑)

 アマチュアも出場できるので、半分がプロだとしても5,000組(漫才は2人以上で行うのでざっと1万人以上は芸人がいる状態)。ライブハウスが集まる西武新宿駅周辺では、「夜に石を投げると、売れてない芸人か、売れてないホストに当たる」と聞いたことがあります。

 いや、お笑い大国過ぎるだろ、ニッポン!!(笑)

 お笑いの賞レースも「M-1」を筆頭にコントの大会「キングオブコント」、ピンネタ(一人話芸)の大会「R-1グランプリ」、女性芸人の大会「THE W」などが乱立しており、さらに今年からは漫才とコントの二刀流の「ダブルインパクト」という大会も予選が始まっており、年中コンテストを戦う時代に入って来ています。

 いや、どれだけ戦わせるんだ!!!(笑)

 芸人が増えることは、面白い人が増えることなので良いことだと思いますが、多ければ多いほど、才能があっても早期に辞めていく人も多いのが悲しい現状です。大会や大手メディアに左右されない独自の活動を見出せれば良いのですが、基本的に毎年賞レースと向き合いつつ、バイトしながら何十年と続けるには、本当に根気と覚悟、そして、もう狂うしかありません(笑)

 大会の決勝に出るほどの実力者が、バイトをしている現実もあります。ただ、それでも辞めないのはやっぱり楽しいからだと思います。

昨年開催したトークライブ『サンキュータツオとヤーレンズ3』