カレーライスと師匠の言葉 (前編)
鈴々舎馬風一門 入門物語
- 落語
師匠、鈴々舎馬風の落語に魅了される
そんなある日、テレビ番組で私の師匠となる鈴々舎馬風が古典落語を口演していました。それが普段、寄席で見ていた爆笑派の師匠とは雰囲気が異なり、いつも大爆笑を取っている師匠が、その師である五代目小さん師匠(私にとっては大師匠にあたります)のような余韻のある古典落語を披露していることに衝撃を受けます。いつもと違う一面に思わず、
「かっこいい!」
と叫びました。今で言うところの、ギャップ萌えです。そして、弟子入りして大爆笑の芸と、しっかりした古典の芸を教わり、師匠のようになりたいと思うようになります。
「怖そうだけど、師匠のもとで修業させてもらえば、自分のダメな人間性も治るかもしれない!」
「芸人は舞台だと怖そうだけど、普段は優しい人が多いし、また舞台で愛想良くしてる人は普段怖かったりするから、舞台でこれだけ怖そうならきっと普段は優しい人に違いない!!」
と、勝手に思い込みます。ただ弟子になって分かったのですが、師匠はあれでも舞台では愛想良くされていて、普段はもっと怖い方で、思惑は完全に外れてしまいました……。それに古典落語はそれ以降、あまりされなくなります。
しかし、わずかの期間しかされなかった師匠の古典落語ですが、私はどれも大好きで、特に好きなのは『長短』です。“気の長い小さん”と、“気の短い馬風”が出てきてるように見えて、私の中では究極の『長短』です。
(後編に続く)