バンビ物語 (後編)
鈴々舎馬風一門 入門物語
- 落語
たくさんことを教えていただいた
二ツ目に昇進後のことです。六代目柳家小さん襲名披露の口上の司会を仰せつかりました。
長野での公演後、ホテルで師匠に言われます。
「お前、ベッドの上で口上の司会やってみろ」
「はい。(小声で)『演芸なかば……』」
「バカ野郎。ボソボソじゃなく、本息でやれ!」
高座の上と同じ調子で口上を語り出すと
「そこはグッと押せ」
「そこで間を開けろ。客が拍手するから」
「そこは抑えろ」
と、その都度、口上を止めて丁寧に教えていただきました。そのおかげで司会が上手いと言われるようになり、弟弟子の風柳くんや平和くんの披露口上の帰りがけに
「お前の司会は良いよ、クサくやるからな。俺も負けじと頑張ったよ(笑)」
と師匠に言われたのが嬉しかったなァ。
師匠とお内儀さんから修行中に教えていただいたことは本当にたくさんありますが、中でも特に印象に残っているお内儀さんの言葉があります。
「噺家だからって、もらいっぱなしはダメだよ。万分の一でもいいから、お返ししなさい」
お内儀さんは、ご馳走になる時は、必ずそのお客様やお店に合いそうな手土産を持参していました。ご挨拶に足を運んだり、お手紙やお電話をこまめになさっている姿も度々見てきました。その心遣いは、来客がある時に食事を勧めてもてなしてくださることにもよく現れていたと思います。
