2025年5月のつれづれ(ありがとう一風亭初月、おめでとう港家小蝶次 浪曲界の未来へ向けて)

杉江松恋の月刊「浪曲つれづれ」第1回

真山隼人、令和6年度花形演芸大賞金賞を受賞

 浪曲界期待の星である二人の話題について触れて終わりにしたい。筆者も関わっている話題なので、少し手前味噌になるのはご容赦願う。

 浪曲親友協会の真山隼人は、2025年4月に令和6年度花形演芸大賞金賞を受賞した。国立演芸場を運営している独立行政法人日本芸術文化振興会主催のもので、大賞・金賞・銀賞がある。令和5年度も獲っており、2年連続での受賞だ。

 真山隼人の入門は2010年、中学3年生14歳での思い切った決断であった。30歳になる今年は、入門15年の節目でもある。それにふさわしく精力的な活動が予定されている。まず注目したいのは、来る5月18日、扶桑文化会館(愛知県丹羽郡扶桑町)において、河竹黙阿弥作の「三人吉三巴白波」に挑む公演だ。演じられるのは序幕「大川端庚申塚の場」で、前半を地歌舞伎・七賀十郎一座が、後半を隼人が演じるという段取りになっている。

 少し先の話になるが、10~11月にかけても注目したい公演がある。近松門左衛門作の「傾城反魂香」を全4席で読むという。10月11日に囃座(山形県山形市)、同18日に山本能楽堂(大阪府大阪市)、同19日に大須演芸場(愛知県名古屋市)、11月24日に浅草木馬亭(東京都台東区)と全4公演が予定されており、必聴だと思う。ぜひ今のうちにご予定を。

 真山隼人は、昨年暮れに、はるき悦巳の人情漫画『じゃりン子チエ』(双葉社)浪曲化プロジェクトを開始した。現在「チエちゃん登場」「小鉄とジュニア」の2作が公演されており、以降も続いていくのである。

 さらに京極夏彦『巷説百物語』(KADOKAWA)の浪曲化にも挑む。第一話『小豆洗い』から始まって、これも長い取り組みとなる予定だ。実は発案者は筆者なので面映ゆいが、真山隼人であれば奇想と趣向に満ちた原作をきっと料理してくれると信じて企画を行った。

 現在発売中の『怪と幽 vol.019』(KADOKAWA)に、隼人・さくらのインタビューが掲載されているのでよろしければどうぞ。公演は7月19日に北とぴあペガサスホール(東京都北区)、8月9日に朝日生命ホール(大阪府大阪市)で行われる。

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