便利な言い訳をください

柳家さん花の「まだ名人になりたい」 第1回

無駄の神に愛される

ところで、五月病だ。私自身は違うし、五月病にかかった人にも会ったことがない。そして、この文章で、淡い親近感すら勘違いだったと気づいてしまった。ところが、もう一度検索してわかったのは、五月病は正式な病名でなく俗称で、一月から十二月まで「◯月病」というものがあるらしい。

まずい。失ったはずの親近感がにわかに湧いてくる。低気圧にすがるしかなかった私の言い訳が、とうとう新たな武器を手に入れたのか。五月に六月病になったっていい。いや、六月病から十二月病まで一気に患ってもいい。可能性は無限大。俺は天才か? こうして愚にもつかないことを考えているから、疲れるのだ。

私は、生まれながらの指示待ち人間。前座修行の間もそうだった。どんなに忙しい場にいても、ただボーッと突っ立っている。そんな私だが、頭の中では大変なことになっている。無駄なことに思いを巡らせ、夢中になってしまう。寄席をうまく回すとか、師匠方をしくじらないように気遣うとか、そんなことはできるわけがない。他人にほとんど興味がないので、思い出はいつも薄味。

私は、無駄の神に愛されてしまったのだ。……誰か助けて。

(毎月1日頃、掲載予定)