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小じかの一歩目 (前編)
鈴々舎馬風一門 入門物語
- 落語
落語を知らずに落研に入る
しかし、落研に入る前の私はというと、落語がどういう芸能か全く知らなかった。そんな私がなぜ落語家になろうと思ったのか。それを語るには、落研との出会いから語らなくてはならないだろう。
そもそも皆さまは、落研がどのような場所かご存じだろうか。団体の名前が落語研究会なので、落語をするのはもちろんなのだが、落語だけを行う団体というわけではない。中には、落研内でコンビを組んで漫才やコントを行う人もいれば、落語は一切やらず、落語会の裏方に徹するという人もいる。落語への造詣が深い人もいれば、まるで知らずに興味を持った人もいる、そんな多様な団体が落研なのである。
先にも述べたが、この二つでいえば、私は圧倒的後者、落語をまるで知らずに落研に興味を持った人なのである。きっと十八歳の頃の谷口くんに、今の小じかのことを伝えても、まるで信じないことだろう。
そんな私が「落語家になりたい」、そう思うようになったきっかけは、落研を対象に行われる落語大会への出場だった。毎年、落研は夏と冬に大きな大会が開催している。どれだけ大きな大会かというと、北は北海道、南は沖縄まで落研に所属する学生が岐阜に集まり、落語を披露するというもの。出場者も二百名を超える人数が参加する。いわばお祭りのような大会だった。
会場には落研部員だけでなく、岐阜の地元の方も多く観覧しており、また審査員には真打の師匠方も参加していた。そんな中で、お客さまを笑わせるために、自分なりに落語を編集したり、クスグリ(客を笑わせる仕草や言葉)を考える。そして高座でその集大成を“笑い”という形でお客さまから評価してもらう。今思い返してみると、そんな時間がとても有意義で、「これを仕事にできたらどれだけいいものか」と、落語家を志す最初のきっかけだったんじゃないかと思う。
