思いがけない旅の始まり
三遊亭好青年の「スウェーデン人落語家の不思議な旅」 第1回
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新しい自分の旅
スウェーデンから遠く離れた日本に来て、しかも粋や野暮について語る伝統的な世界に飛び込むなんて、子供の頃にはまったく想像もできませんでした。宇宙を探検する方がまだ現実的に思えます。
故郷とは全く異なる日本に来たからには、できる限り問題を起こさないようにしたいと思っていました。先輩の落語家に相談すると、「まずは日本人になりなさい」とアドバイスされます。昔から「郷に入っては郷に従え」と言いますから、その通りにしようと決めました。ちなみに英語やスウェーデン語にも似たような諺(ことわざ)があり、「ローマではローマ人のなすようになせ(When in Rome, do as the Romans do)」と言います。
まるで別の宇宙にあるような日本で、伝統的な修行を経験して、私はどう変わったのかな……。果たして日本人になれたのか、なるべきだったのかも考えます。でもスウェーデンではできない貴重な経験を確かにしてきましたし、なんとも不思議な仕事にも就きました。
これからどんな未来が私に訪れるのでしょうか?
落語の世界で日本人らしく振る舞おうとすると、ふとした瞬間に自分はスウェーデン人だと感じることがあります。外国人でも粋な噺家になれると証明できたかどうかは分かりませんが、とにかく次のステップに歩きだそうと思います。
日本人らしい振る舞いで学んだことと、スウェーデン人としてのアイデンティティを統合して、独自の落語を、新しい噺家としての姿を、そして新しい自分を…………暇があったら作るかもしれません(笑)。どうぞ引き続き、私の旅を一緒に楽しんでください。
それでは、お後がよろしいようで。

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(毎月25日頃、掲載予定)