憧れ
座布団の片隅から 第1回
- 連載
- 落語
大師匠・好楽に学ぶ
こう書くと、まるで私が何の努力もしていないように聞こえるかもしれないが、それは断じて違う。私だって、一生懸命頑張ったのだ……打ち上げで。落語じゃねぇのかよ! では、どうやってこのエッセイの仕事が決まったのか。実は、私のよく出演する落語会に、この連載の担当であるIさんが時折、顔を出してくださる。ある会の終演後の打ち上げで、Iさんとお話しているうちに、この仕事をいただいたのだ。
お酒の席で仕事を増やすのは、好楽一門の伝統芸である。好楽と一度打ち上げを共にしてほしい。絶対ファンになる。いや、もちろん落語を聞いてもファンになるけどね。打ち上げでのお客様への心配りや盛り上げ方は、すべて好楽から教わったと言っても過言ではない。つまり、落語界で生き抜く知恵の1つを好楽に学んだわけだ。本当に好楽一門で良かったと思っている。……ただ、好楽から落語のアドバイスをもらったことは、一度もない。好楽一門で本当に良かったのか?
話を戻そう。その打ち上げの席で、Iさんからこう言われた。
「好二郎さんのマクラ(落語に入る前の噺の導入部分)は非常にまとまっていて、面白いんですよ。きっと読者を惹きつける文章を書けますよ。今度、Webサイトを立ち上げるから、ぜひ書いてください! あのマクラは、ちゃんと台本を作ってるんですか? いや、ホントに好二郎さんのマクラは、よく練ってますね。マクラが……マクラが……」
それ以降、一切“落語”には触れなかったのが少し気になったが、褒められると調子に乗るのが芸人の性(さが)。二つ返事で連載を引き受けた。