道灌、あたま山、芝浜
林家はな平の「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」第1回
- 連載
- 落語
二席目 『あたま山』 ☆☆
■あらすじ
ケチな吝兵衛(けちべえ)がさくらんぼの種がもったいないからと食べてしまうと、吝兵衛の頭から芽が出て、やがて大きな桜の木になる。頭山(あたまやま)と名付けられ、花見をしようと沢山の人が上がってどんちゃん騒ぎ。
頭の上がうるさくて仕方がない吝兵衛は、桜の木を引っこ抜いてしまうと、そこに大きな穴が空いた。今度は、そこに雨水が溜まって、大きな池ができて、また沢山の人が船を出して、魚釣りを始めだす始末。
怒り狂った吝兵衛が取った行動は……。
■オチ
池に身を投げて死んでしまう。
■解説
この噺は、地の文(会話や動作がないナレーション)がほとんどで、オチも地の文で終わる。説明が必要なオチを☆☆としたが、この噺は説明をしてもわからないかもしれない。筆者もわからないからである。そもそも、頭の上に桜の木が生えるのも理解できないし、池ができるのも人が集まって花見をしたり、釣りをしたり、ましてそこへ身を投げるのも、ずっと理解できないのがこの噺である。
だけど、現実にはあり得ない話を扱うのも落語で、狸が化けたり、犬が人間になったり、目の見えなかった人が雷に打たれて見えるようになったり、そんな噺はいくらもある。ただ、この「あたま山」だけは、最初から最後まであり得ないことが続く。
こういうネタは、映像として面白いようでアニメになったり、絵本になったりしている。「どうやって頭にできた池の中に身を投げるのか?」という疑問を持ち続けるのは、圧倒的に大人の方が多い。世知辛い世の中の現実を知り過ぎているからか。子供は、あまりそこは気にしないようで、素直に聴いている。どうかこのネタは、子供心で聴いてもらいたい。