2025年7月のつれづれ(沢村豊子の急逝、広沢美舟の10周年)
月刊「浪曲つれづれ」 第3回
- 浪曲
杉江 松恋
2025/07/09
広沢美舟の10周年記念! 浪曲と説経節の響宴
同会で曲師を務める広沢美舟も2025年は10周年である。8月11日(月祝)にティアラこうとう小ホールで「拝みます拝みます、おかげさまですの会」が開催される(19時開演)。曲師のこうした会は珍しい。
出演者は、亡き師匠の相三味線である玉川奈々福、やはり沢村豊子に導かれて浪曲界に復帰した木村勝千代。この二人は関東節で、残る三人は関西節で、三代目広沢菊春、さらに港家小ゆき、三門綾の三名である。五人の演者をおそらくタテビキ、つまり広沢美舟がすべて弾くのだろう。八面六臂の活躍を見届けたい。
ちなみに、出演者の一人である広沢菊春は美舟の夫であり、現在の相三味線でもある。その二人が月例で神保町・らくごカフェで開催しているのが「菊春きくかい」だが、現在は中世に起源を持つ説経節から「小栗判官」の連続読みに挑戦している。
全6回のうち、3回はすでに終了。しかし、会の初めに前回までのあらすじを手短に説明してくれるので、これからでもまったく問題ない。第4回は7月17日(木)13時半からで、「照手流浪」の巻だ。

(クリックすると拡大します)
天光軒新月と五月一秀の奇縁
かなり先になってしまうが、大阪では11月24日(月祝)に心斎橋角座で「天光軒新月・五月一秀二人会」が開催される(13時開演)。
ここ数年の新月は、説経節五題の浪曲化に取り組んでいた。「和泉信太の白狐伝」「刈萱道心石童丸」「俊徳丸」「小栗判官照手姫」と席を重ね、このたび「山椒大夫」で見事にそれが完結するのである。その記念の会だ。
天光軒新月は1971年に三代目天光軒満月に入門、1974年に年季明けをしたのち、師匠の許可を得て三代目玉川勝太郎の預かり弟子となって関東で2年間活動していた時期がある。
共演の五月一秀は1973年五月一朗に入門、1975年から長い休業期間があったが、2012年に復帰を果たした。二人の軌跡は短いながらも東京で重なっているのである。大阪の浪曲親友協会所属ながら、そうした奇縁のある二人というのがおもしろい。出演は他に、三原麻衣と作家の山下孝夫、曲師は虹友美、藤初雪が務める。
最後にもうひとつ公演の情報を。毎年、夏の終わりに開催されていた「すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り」が、今年は7月30日・31日(水・木)に行われる。17~21時に竪川親水公園特設会場(東京都墨田区江東橋2丁目1番地付近)での開催だ。行ったことがある方はおわかりかと思うが、首都高速7号線の高架下なので、少しぐらいの雨なら大丈夫である。
河内音頭・江州温度は、関西浪曲と地続きなので、ぜひこちらもお楽しみを。

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(以上、敬称略)
(毎月9日頃、掲載予定)
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