小さな演芸場、大きな縁 ~シン・道楽亭、再始動の一年

月刊「シン・道楽亭コラム」 第3回

演芸の場を残したい

 その後は、道楽亭にほぼ毎月通っていましたが、昨年、橋本さんの体調不良を知りました。快復して道楽亭を再開してほしいと願っていた矢先に、今度は訃報に接することになりました。

 道楽亭の魅力にはまった演芸好きとしては、あの場を残してほしいという願望はありました。ただでさえ演芸のできる場が減ってきているのに、またひとつ、その灯が消えてしまうのは何とも惜しいとも思っていました。

道楽亭といったらこの看板。今も残る橋本さんのお顔のイラスト

 私自身、コロナ禍で落語をしゃべる機会を失ってしまった二ツ目さんに自宅を開放し、二カ月に一度、落語会を開いていました。それゆえ、芸人さんにとって芸を披露する場の大切さをそばで見ていて痛感していましたが、まさか自分が道楽亭の担い手の一人になるとは想像していませんでした。

 「共同席亭」の打診を受けた時は、正直悩みました。私は障害のある方の生活支援を仕事にしており、毎日、現場に出て働いているし、自主的な落語会を定期的に開いています。毎日通うのはまず不可能で、役に立てるのか不安ばかりでした。

 しかし、お店に立てるのは月に二~三回だけという条件を受け入れていただき、シン・道楽亭の一員として今日に至っています。