旅路はすべて酒のなか

三遊亭司の「二藍の文箱」 第2回

旅に出たい

 ドイツ文学者で翻訳家、吉田健一は、軽妙な随筆、紀行文を書く文筆家でもある。余談だが、吉田茂の息子である。

 今回の旅は、吉田健一の書く夜行列車の紀行文への憧憬そのものだ。憧れとひと口に言っても、手に届くものからそうでないものまである。中でも、寝台特急の旅のように、したくてももう出来ないものもある。

 長く生きてくると、あたらしく出来ることより、失くなることの方が多くなる気がする。それが気のせいということも、少しはわかるが、それならば、万事、思い立ったが吉日だ。

 旅に出たい。

 あなたがいま、そう思ったとしたら。それはあなたが「呼ばれた」その時だ。つぎは、あなたの旅のはなしを聞かせてもらいたい。できれば旅先で出会った酒なんかを飲みながら。

立山に擁れて

(毎月2日頃、掲載予定)