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どの噺からするべきなのか

柳家小志んの「噺家渡世の余生な噺」 第3回

第二部:空想の独裁者

 この性分が困るのは、自分一人で完結しない場面だ。

 落語会の企画でも、イベントの構成でも、私の頭の中では何十時間も熟考が済んでいる。ところが共有されるのは、最後の一言だけだったりする。

 「じゃあ、こういう方向でお願いします」

 まるで空想の独裁者である。

 それでも、何も言わずついてきてくれる人たちがいる。有難くもあり、申し訳なくもある。いや、それだけではない。私の空想を先読みし、事前に段取りまで整えてくれるような方々には頭が上がらない。こういう方々こそ、本当のホスピタリティを心得た聡明な方々だと思う。

石垣島の玉取崎展望台にて

 一方で、何か提案すると即座に否定から入る人間もいる。

 反対することを「思慮深さ」だと勘違いしている輩に限って、考えるより先に口が動く。そんな時には、心の中でこう問いかけることにしている。

 「それを言うまでに、どれだけ時間をかけた?」

 もちろん、そんなことを声に出しては言わない。歳を重ねるとは、そういう自制を覚えることでもあるのだ。