どの噺からするべきなのか
「噺家渡世の余生な噺」 第3回
- 落語
柳家 小志ん
2025/07/14
第三部:過去を語れば、噺は尽きぬ
気づけば、また自分語りになってしまった。だが、これからお付き合いいただくにあたり、書き手の人となりを少しでも知ってもらえたなら、という思惑でもある。
とは言え――。
思い起こせば、私の母方の祖父は沖縄・国頭郡本部町の生まれ。若き日に親族を頼って、神奈川・横浜市鶴見区仲通、通称リトル沖縄へと出てきた。祖母は長崎、父方の祖父母は千葉・富津の出身。
両親は、それぞれどこで生まれ、どのように育ち、どこで出会い、姉が生まれ、やがて私が誕生し、そして、どのような人生を歩んできたのか――。
「さてさて、いよいよ面白くなるところでございますが――この続きは、また次回!」
……などと、講談語りを始めてしまったら、この連載など一年あっても足りはしない。だから今日はまだ、「どの噺から始めようか」という、ただの躊躇いの噺に留めておく。
歳を重ねると、人は自然と「段取り」に重きを置くようになる。若気の至りはとうに消え、今では「段取り八分」などと口にしてみせるが、人生という噺は得てして、その通りに進んではくれない。
師匠に弟子入りを願い出たのは、もう二十年ほど前のこと。噺家渡世の道を志すにあたり、私は努力と実力と収入は必ず比例するものだと信じていた。その思いがあったからこそ、入門の怖さをなんとか乗り越えることができたのだ。
けれども、「信じていた」と今こうして書いている時点で、それが既に幻想だったと証明してしまっている。何を語ろうとも最後は笑い、少しの哀しみ、そしてもう一度笑えるような噺で終わりたい。
さて――。
次回こそ、どれか一つ、本題に入るとしよう。たぶん、だが。
(毎月14日頃、掲載予定)
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