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社会派講談の旗手 神田香織(中編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第6回

忘れられる被害者たち

香織 建てたばかりの家から放射能の線量が高くて避難せざるを得ない。ところがそこは補償の区域に入っていないから、自腹で生活をしなければならない。そういう人が震災が起こってから14年経っても、まだまだ沢山います。裁判を起こしても、国も責任はないし、電力会社にも賠償責任がない。こういう理不尽なことがずっと続いている。

 もっと目を広ければ、福島の件は戦争に繋がっているんですよね。国民みんなが戦争で被害を受けたんだから、みんなで耐えましょうということで、誰も保障されていないんですよ。空襲を受けて身体に障害を負っても、どんな目にあったとしても、一円も貰っていない。ところが軍人さんのところへの恩給は、3兆円を超えたというんです。今からでもいいから、80歳でも90歳でも、戦争の被害に遭った人たちの命がある間に、「申し訳ない」と補償しなければならないと思うんですよね。

 今、東京大空襲の被害者の人たちと会を開いていたりしますし、被害者の代表は防空頭巾をかぶって、国会前で抗議集会を開いていたりします。本来、責任を取るべき人たちを無視するばかりでなく踏みにじるんですよ、この国は。

香織 東京都でもそうですが、一番大切にしなければならないのはそこなんですよ。どれだけの人がお亡くなりになっているのか。亡くなった人たちに敬意を払って、その人たちの気持ちに寄り添えば、もっといい政治ができると思うんですけどね。