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『あんぱん』と『はだしのゲン』と『のど自慢』

東家一太郎の「浪曲案内 連続読み」 第4回

『あんぱん』と『はだしのゲン』と『のど自慢』

アンパンマンのように、たくさんの人を元気にしたい(画:原えつお)

東家 一太郎

執筆者

東家 一太郎

執筆者プロフィール

朝ドラ3回目の出演! 『あんぱん』出演秘話

 8月6日(水)放送のNHK連続テレビ小説『あんぱん』第19週「勇気の花」93回に、東家一太郎 出演させていただきました。

 朝ドラ『あんぱん』は、アンパンマンを生み出した、やなせたかしと暢(のぶ)夫婦をモデルにした物語。一太郎が出演したシーンは、ヒロインのぶ(今田美桜さん)の末妹・メイコ(原菜乃華さん)と健太郎(高橋文哉さん)の恋物語の途中、メイコちゃんが憧れの『素人のど自慢』の予選会で「東京ブギウギ」を歌う場面。

 前の前の出場者の役です。三味線を弾きながら、浪曲ひとふし、うなりました。

 ぼーっとしていると見逃しかねない中、「ウォーリーさがせ!」ならぬ「一太郎をさがせ!」。動体視力を駆使してお気付きくださった方から「見たよ!」とたくさんのご連絡、SNSでもコメントをいただきました。

 案の定、「台所に立っている間に見逃した」という人も。でもお昼の再放送でもう一度見て、動画まで撮って送ってくださいました。家庭や職場で盛り上がったという嬉しい声も。

 お茶の水スカイルーム太陽のマスターからは、「テレビ見ました。もっと映って欲しかったです」と留守電が! 録画した映像を、お店のお客さんにも見せてくださって、8月10日の太陽での浪曲会では、仲入りの時になんと上映会!

 皆さんまるで家族のように見守ってくださり、「あれ、芝居じゃなくて本物の『のど自慢』に出演したんだっけ?」と錯覚するような不思議な感覚。『のど自慢』放送開始当時の80年ほど前も、令和の今も、日本の温かい人情は少しも変わりません。

 今回の浪曲案内は、そんな一太郎 朝ドラ出演のッ


事の次第の 顛末や
記憶いたせし 概略を 読みたてまつる

 実は朝ドラこと、NHK連続テレビ小説にはご縁がございまして、今回が3回目の出演!

 1回目は、ご存じ『あまちゃん』。エンディングに数秒出てくる「まだまだあまちゃんですが……」という写真。放送当時の2013年(平成25年)、年季明け(落語講談で云う二ツ目昇進のようなもの)の会で、木馬亭の舞台で曲師・東家美と撮影した記念の写真を送りました。「浪曲師という変わった職業だから、採用してくれるかな?」との願い叶って、取り上げていただきました。

 2回目は、作曲家・古関裕而(こせきゆうじ)さんと妻の金子さんをモデルにした『エール』。音声だけですが、蓄音機から流れるレコードの浪花節で、美さんの三味線と共に出ています。渋いですが、浪曲中興の祖、桃中軒雲右衛門(とうちゅうけんくもえもん)の「南部坂雪の別れ」と関東節東家で一世風靡した二代目東家楽遊(あずまやらくゆう)の「小松嵐」を節真似して、ドラマ用に収録しました。

 そして今回『あんぱん』で、朝ドラ3回目。ですが、お芝居は初! NHK『ファミリーヒストリー』の泉ピン子さんの回で、お父さんの広沢竜造役で出演させていただいたことはありますが、1人の人物を演じる役は、何人かの登場人物を演じ分ける浪曲とはまた少し違います。何事も浪曲のために勉強になります。

 ドキドキワクワクしながら、渋谷のNHK放送センターへ向かいました。