2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
「講談最前線」 第8回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/09/14
二ツ目に昇進した宝井小琴
講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。
講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。(2025年9月の前編/後編のうちの後編)
講談界の慶事① ~宝井小琴の二ツ目昇進
残暑というには、まだ程遠いような毎日が続く9月に入り、“暑い”ならぬ“熱い”慶事が二件、講談界に続いて起こった。
講談協会は、近年入門者が相次ぎ、現在、前座が9名いるが(一時期、14人いた)、その立前座(たてぜんざ:前座のトップ)であり、その働きぶりの良さから「スーパー前座」と称された宝井小琴(たからいこきん)が9月1日から二ツ目に昇進した。
2021年(令和3年)6月に宝井琴星に入門。4年という前座修業期間の間、前座の基本の一つである武芸物や師の琴星作品等、種々の話に取り組んできた。いつも元気たっぷりで、口跡鮮やかに読み進め、聴き手の心に響くような高座は、名前の通り、琴の音色のようだとしたら大袈裟だろうか。
今回、その名前は変えずに二ツ目に昇進したが、これからも多くの人の心に響くような話を読む講釈師になってもらいたい。
その二ツ目昇進の披露興行を兼ねる「津の守講談会」の三日目(9月3日)に足を運んだ。初日は小琴が入門を決意したという、師匠・琴星作の『白羊塚の由来』。二日目は「大久保彦左衛門『木村の梅』」と、それに続くこの日は『男女ノ川(みなのがわ)』を読んだ。
昭和の“迷”横綱の人生に迫った琴星作の一席であるが、相撲話によく見られる出世談とは異なり、人にはそれぞれ色々な人生があり、どんな人生であっても、一度きりの人生を悔いがないように生きていかなければ!と、そこには小琴のこれからの決意が見られるようでもあった。
個人的な話になるが、私の祖父が戦前に両国で衣料工場を経営していた時に、佐渡ヶ嶽部屋に出入りをしており、そこで男女ノ川との交流があった。戦中は、二人して中島製作所に勤務。祖父が三鷹に家を設けた時には、同じく三鷹で暮らした男女ノ川の家も遠くない距離にあり、“とにかく大きくて、どこか人を食ったような人だった”とよく話を聞かせてくれた。
閑話休題。第34代横綱となるも、引退してからは数奇の、そして寂しい晩年を送った男女ノ川だが、横綱の貫禄と威厳は持ち続け、先に“迷”横綱としたことを示すように、小琴はケレンを差し挟みながら、どこかとぼけた男女ノ川の人生を得意の調子で描いて見せた。
そこには小琴の「どうしてこうなったかと言うと……」という疑問と、「それを解決していきます」といったような口調にも似合っており、これからの小琴を支え、また自分でも作っていきたいという新作の礎になっていく話に違いないと感じられた。
新二ツ目とはいえ、確かな腕を感じさせる宝井小琴の今後の活躍に引き続き期待していきたい。
いま読まれています!
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様の香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
「べべログ」 第3回
グリル梵の「ヘレカツカレー煮込み」(大阪市浪速区)
~20年越しの味と笑い。蘇るあの日の記憶
笑福亭 べ瓶
2025/11/21
「エッセイ的な何か」 第6回
11月7日は鍋の日 →高級食材を食いまくった男の疑問
~なぜ高額なアンコウ鍋が食べ放題だったんだろう?
三笑亭 夢丸
2025/11/19
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第4回
あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/06/27
「すずめのさえずり」 第一回
エッセイについて
~待望の連載がスタート!
古今亭 志ん雀
2025/07/26
「ラルテの、てんてこ舞い」 第1回
悩ましい食の話と、桂雀々エピソード1
~桂雀々師匠と二羽のカラスの物語
ラルテ
2025/06/29
月刊「シン・道楽亭コラム」 第3回
小さな演芸場、大きな縁 ~シン・道楽亭、再始動の一年
~還暦を過ぎて見つけた「宝物」
シン・道楽亭
2025/07/10
「くだらな観音菩薩」 第7回
目青不動
~人の縁に感謝。ありがとうございます
林家 きく麿
2025/11/16
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様の香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
「べべログ」 第3回
グリル梵の「ヘレカツカレー煮込み」(大阪市浪速区)
~20年越しの味と笑い。蘇るあの日の記憶
笑福亭 べ瓶
2025/11/21
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第4回
あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/06/27
「エッセイ的な何か」 第6回
11月7日は鍋の日 →高級食材を食いまくった男の疑問
~なぜ高額なアンコウ鍋が食べ放題だったんだろう?
三笑亭 夢丸
2025/11/19
「講談最前線」 第10回
2025年11月の最前線 (聴講記:神田松麻呂・神田鯉花 連続読み、神田春陽の会)
~リレー講談「寛永宮本武蔵伝」と、緩急自在の「大岡政談」
瀧口 雅仁
2025/11/17
「マクラになるかも知れない話」 第三回
となりは鼻うがいをする人ぞ
~ねぇママ、パパは何をしているの?
三遊亭 萬都
2025/10/22
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
「ラルテの、てんてこ舞い」 第1回
悩ましい食の話と、桂雀々エピソード1
~桂雀々師匠と二羽のカラスの物語
ラルテ
2025/06/29
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
「講談最前線」 第10回
2025年11月の最前線 (聴講記:神田松麻呂・神田鯉花 連続読み、神田春陽の会)
~リレー講談「寛永宮本武蔵伝」と、緩急自在の「大岡政談」
瀧口 雅仁
2025/11/17
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
「くだらな観音菩薩」 第7回
目青不動
~人の縁に感謝。ありがとうございます
林家 きく麿
2025/11/16
「浪曲案内 連続読み」 第7回
レッサーパンダの風太くんは、パン間国宝!
~日本中が沸いた風太くんの生き様が浪曲に!
東家 一太郎
2025/11/15
「エッセイ的な何か」 第6回
11月7日は鍋の日 →高級食材を食いまくった男の疑問
~なぜ高額なアンコウ鍋が食べ放題だったんだろう?
三笑亭 夢丸
2025/11/19
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様の香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第7回
〈書評〉 若手だった師匠たち 年間1000席の寄席通いノートから(寺脇研 著)
~「忘れ去られるはずの瞬間」が浮かび上がる貴重な論集
杉江 松恋
2025/11/19
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第7回
ビールの秋、日本酒の秋、わたしの美が深まる秋
~浪曲師の日記が、ここまで笑えていいんですか!
東家 千春
2025/11/03
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第4回
上方落語大会議「なんぼでなんぼ」
~苛酷な仕事、ギャラなんぼやったら行く?
桂 三四郎
2025/10/24
「マクラになるかも知れない話」 第三回
となりは鼻うがいをする人ぞ
~ねぇママ、パパは何をしているの?
三遊亭 萬都
2025/10/22
入船亭扇太の「お恐れながら申し上げます」 第3回
番頭色々
~「本当にやって良かった」 に感謝を込めて
入船亭 扇太
2025/11/11
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
古今亭佑輔とメタバースの世界 第5回
現実世界との相互作用
~VRで広がる落語の可能性
古今亭 佑輔
2025/11/05
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第4回
上方落語大会議「なんぼでなんぼ」
~苛酷な仕事、ギャラなんぼやったら行く?
桂 三四郎
2025/10/24
「マクラになるかも知れない話」 第三回
となりは鼻うがいをする人ぞ
~ねぇママ、パパは何をしているの?
三遊亭 萬都
2025/10/22
「エッセイ的な何か」 第5回
10/9は、アメリカンドッグの日 →兄さんに呼び出された男の困惑
~その男は『ドッグ』と呼ばれた!
三笑亭 夢丸
2025/10/21
「かけはしのしゅんのはなし」 第5回
スポーツの秋! 落語家がサーフパンツで舞台に立つ日
~筋肉は裏切らないが、笑いはたまに裏切る?
春風亭 かけ橋
2025/10/18
「くだらな観音菩薩」 第6回
鑑真和上
~そう、諦めちゃあいけないんだ
林家 きく麿
2025/10/16
「令和らくご改造計画」
第三話 「内輪ノリ」
~またも前座が楽屋を混乱に陥れる!
三遊亭 ごはんつぶ
2025/10/12
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第6回
ビール飲み干し、そしてわたしに秋が来る
~時にヒリヒリ、時に爆笑の舞台裏!
東家 千春
2025/10/03