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袋氷
三遊亭好二郎の「座布団の片隅から」 第4回
- 落語

子供の頃の夢が叶う、「朝倉のおいしい水 かき氷」
いびきに傷つく私の心
35歳の夏。今さら“かき氷”にハマっている。
この蒸し暑い中、クーラーでガンガンに冷やした家の中で食べるかき氷の魅力と言ったらない。
この間も炎天下の中、汗だくで落語会の会場に行った。すぐに出番が来る。前の演者のネタを聞きながら、“今日はこうしよう、あぁしよう”と頭の中でグルグルとシミュレーションをして高座へと上がる。
出囃子に乗って高座へ上がって驚いた。もう寝ている客がいる。早くない!? まだ一言も喋っていないのに。しかもいびきをかいて爆睡しているではないか。そこからの15分間は、まさに地獄であった。
「えー、しばらくお付き合いのほどを願いますが……」
「ンゴォォォ!」
「落語の登場人物はと言いますと、熊さんはっつぁん、横町のご隠居さん……」
「グッェェェエ。……グゥ? グェェ」
やめてくれ。私の落語の中におっさんのすごい声がカットインしてくる。なんだ「グゥ?」って。いびきに疑問符がついたのを初めて聞いた。
……しまった。いびきがすごい客がいた場合のシミュレーションをしていなかった! 次からはこんな事態も想定して上手いこと対応しようと心に決め、逃げるようにして会場を後にして家路を急ぐ。
こうなったら、かき氷だけが私の心の慰めだ。ストレスと暑さでオーバーヒート寸前の頭を緊急冷却したい。