第三話 「内輪ノリ」
「令和らくご改造計画」
- 落語
三遊亭 ごはんつぶ
2025/10/12
絵:大熊2号
#1
落語は、いまでは立派な古典芸能であるとともに、そのルーツは紛れもない大衆芸能である。
それにもかかわらず――ときどき「これは、いわゆる内輪ノリが過ぎるのではないか」と思う瞬間がある。
わかりやすい例を挙げれば、お客さんを前にした高座のマクラ(落語の導入としての漫談部分)で、芸人仲間の名前がごく自然に飛び出すことがある。
常連客や同業者なら笑えるのかもしれないが、はじめて来た人からすれば「誰のこと?」と戸惑い、置いてけぼりだ。
もっとも寄席というある種、閉鎖的な文化において、この内輪ネタ・内輪ノリは仲間意識を刺激し、実際に客席でもよくウケる。これがその日の盛り上がりに繋がることもある。
そのため寄席と内輪ネタは、なかなか切り離せないものだと思う。要はバランスさえ取れていればよく、そればかりにならなければ問題はないのかもしれない。
しかしこんなことを言うと、
「そんなことは、誰だってわかっている。内輪ネタばかりやっているのは一部の芸人だけで、大多数の芸人は初心者も置いていかないように、わかりやすい高座を心がけているだろ」
――そう反論する人がいるだろう。
しかし、本当にそうだろうか。高座での内輪ネタは極端な一例にすぎず、実際には演芸界の至るところに初心者を拒絶するような内輪ノリが蔓延している。
ただ、当の本人たちがそれに気づいていないだけなのだ。
ためしに、落語会のチラシを眺めてみればどうだろうか。そこには「勉強会」「独演会」「二人会」といった言葉ばかりが並び、「落語」という文字がどこにも書かれていないことが珍しくない。
これでは業界を知らない人が見ても、それが落語のイベントだと気づかない。チラシという宣伝の媒体が、むしろ新規参入者を拒絶する乱暴なものになってしまっているのだ。
嘘だと思うなら、SNSに載っている画像や、寄席に置かれたチラシのラックを見てみてほしい。
「落語」と書かれていないチラシは、酷い時には全体の半分近くもある(私は以前にもこの件について何度か発信しており、その影響かどうかはわからないが、最近はこれでも、ほんの少しずつ改善されているようにも思う)。
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