上方落語大会議「なんぼでなんぼ」
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第4回
- 落語
桂 三四郎
2025/10/24
苛酷な仕事、ギャラなんぼやったら行く?(画:大久保ナオ登)
炎天下の野外で30分の落語!?
「言葉には力がある」
先月のエッセイでそう書いた。
調子に乗って言った一言で手痛いしっぺ返しを喰らいますよ、という意味の
「言霊のブーメラン」
このエッセイを書いた直後に、めちゃくちゃでかいブーメランが返ってきてしまった。
8月頭、お客様から1本のメールが届いた。
「こんな落語会で頑張ってる人いますよ~」
添付された画像を見て驚いた。
とある落語家が閑散とした炎天下の野外で、落語を披露している写真だった。
実は、落語家には見られたい仕事とあまり見られたくない仕事がある。
人に見ていただいてなんぼの商売なのに、あまり見られたくない仕事……。
めちゃくちゃに矛盾しているけど、確かに存在する。
まあ、いわば同業者には見られたくない仕事ってことなんだけど。
「堂々30分の持ち時間を務められました!!」
30分!!
なが!!
今年の8月の暑さは40℃超えの地域もあるくらいの猛暑で、Tシャツ短パンでも熱中症になるくらいの暑さだ。
言っとくけど、やるほうも地獄だけど、聞くほうも地獄よ……。
その上、我々は着物を着ている……。
しかも、こういう仕事の時は、汚れても洗えるポリエステルと相場が決まっている。
つまり体中にサランラップを巻きながら、炎天下で30分落語をするという状態。
電子レンジで温められている肉まんが落語しているようなものだ。
これは、なかなか過酷な仕事だ。
落語家たちの下世話な大会議
すぐに、その場にいた落語家仲間と会議が始まった。
どういう会議かと言うと
「夏の炎天下の野外!! 持ち時間30分!! この仕事を受けるか否か!!」
ではない。
「この仕事、ギャラなんぼやったら行く!?」
という世にも下世話な上方落語大会議
「なんぼでなんぼ?」
である。
我々もプロ!!
そこは評価額で決めようではないか!!
というなんとも下世話な会議だけど
楽屋内は、下世話であれば下世話であるほど盛り上がる。
「いや~、この仕事は受けられへんな~」
「この仕事やったら、これくらいは欲しいな~」
「でも、熱中症になってもしものことがあったら、これが最後の舞台ですよ」
「それは嫌やな~」
ほかにも扇風機は置けるのか?
アイスノンを体中に貼ろう!!
落語中に給水していいのか?
落語中に放水してもらおう等と様々な意見が飛び交い
みんなの中で「〇〇円なら歯を食いしばって行く」という決定が出された。

その時、ある若手が言った。
「私はお金に関係なく行きますよ。お客様の前で落語できるのに、値段なんて気にしません。お声がけしていただいたことがありがたいですから」
キラキラした、世の中の汚れを全く知らないような綺麗な目で見つめられた下世話な落語家たちは、目線を落としながら
「そ、そうだよね……」
「僕たち、お金のためにやってるわけじゃないもんね……」
「そうだよ、落語を聞いてもらえるだけで幸せさ!!」
「さ、そろそろ開演の時間だ!! 今日もお客様を楽しませよう!!」
「そうだ!! 今日の出演料はみんなユニセフに寄付しようよ!!」
「うん、それはいい!! そうしよう!!」
「そうしようそうしよう!!」
そんな人間は一人もいるわけがなく、全員が
「じゃかましわ!! この青二歳が!!!! 地獄みたいな環境の仕事を雀の涙みたいなギャラでこきつかったるさかいな!! 覚悟しとけボケナス!!!」
と心に誓い、この会議は終わった。
いま読まれています!
「くだらな観音菩薩」 第18回
羅怙羅尊者
~浪曲女子との共演から生まれた新たな夢と、仏様が教えてくれる心の優しさ。笑いの向こうに、芸人の胸の内が見えるコラム
林家 きく麿
2026/10/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第48回
好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/10/15
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第49回
好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/10/16
「お恐れながら申し上げます」 第14回
噺家の衣替えの話
~いちばん大変なのは、半衿の縫い付け?
入船亭 扇太
2026/10/11
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第18回
友達ほしい
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/10/03
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
月刊「シン・道楽亭コラム」 第17回
演芸ファンがほしかったスマホアプリを作りました ――「ご贔屓手帖」ができるまで
~ファンの小さな困りごとから生まれたアプリの物語
シン・道楽亭
2026/09/09
「噺家渡世の余生な噺」 第18回
人に負けないもの
~情熱は、巡ってくる
柳家 小志ん
2026/10/14
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第4回
あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/06/27
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「くだらな観音菩薩」 第18回
羅怙羅尊者
~浪曲女子との共演から生まれた新たな夢と、仏様が教えてくれる心の優しさ。笑いの向こうに、芸人の胸の内が見えるコラム
林家 きく麿
2026/10/16
「お恐れながら申し上げます」 第14回
噺家の衣替えの話
~いちばん大変なのは、半衿の縫い付け?
入船亭 扇太
2026/10/11
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第48回
好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/10/15
「噺家渡世の余生な噺」 第18回
人に負けないもの
~情熱は、巡ってくる
柳家 小志ん
2026/10/14
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第16回
〈書評〉 殺し屋の営業術 (野宮有 著)
~凄腕営業マンが命がけで売上2億円を目指す、異色の犯罪ミステリー小説!
笑福亭 茶光
2026/10/12
「ずいひつかつどお」 第13回
なつさんさようなら
~夏が終わって良かった。夏なんていいところが一つもないのだから
立川 談寛
2026/10/09
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第49回
好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/10/16
「古今亭佑輔とメタバースの世界」 第14回
恩返し
~師匠から頂いた「佑輔」という名前は、今も進む道を照らしてくれる
古今亭 佑輔
2026/10/05
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「古今亭佑輔とメタバースの世界」 第14回
恩返し
~師匠から頂いた「佑輔」という名前は、今も進む道を照らしてくれる
古今亭 佑輔
2026/10/05
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第13回
「継続は力なり」ではない
~僕を待っていた、悲しい結末。“計画倒れ人生”を笑い飛ばす愉快な実話エッセイ!?
桂 三四郎
2026/09/29
「コソメキネマ」 第十七回
玉川祐子師匠
~103歳の玉川祐子師匠、ついに『徹子の部屋』へ!! 映画は『ヤング@ハート』をご紹介。
港家 小そめ
2026/09/19
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第18回
友達ほしい
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/10/03
「マクラになるかも知れない話」 第十四回
君たちはどう痩せるか
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/09/25
「テーマをもらえば考えます」 第14回
師匠のコーヒーは
~笑いも苦みもたっぷり、師弟をつなぐコーヒーの思い出を綴ったエッセイ
三遊亭 天どん
2026/09/30
「くだらな観音菩薩」 第18回
羅怙羅尊者
~浪曲女子との共演から生まれた新たな夢と、仏様が教えてくれる心の優しさ。笑いの向こうに、芸人の胸の内が見えるコラム
林家 きく麿
2026/10/16
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第17回
〈書評〉 役者の落語はお父さんのカレー (小宮孝泰 著)
~「演じる」と「語る」の間に、落語の魅力がある。演劇と落語を比べて見つけた、笑いの秘密
杉江 松恋
2026/09/22
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第13回
「継続は力なり」ではない
~僕を待っていた、悲しい結末。“計画倒れ人生”を笑い飛ばす愉快な実話エッセイ!?
桂 三四郎
2026/09/29
「令和らくご改造計画」
第十四話 「踊る金持ちピエロ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/09/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第17回
演芸ファンがほしかったスマホアプリを作りました ――「ご贔屓手帖」ができるまで
~ファンの小さな困りごとから生まれたアプリの物語
シン・道楽亭
2026/09/09
「座布団の片隅から」 第17回
好楽
~祝・傘寿! タフすぎる三遊亭好楽師匠の宴
三遊亭 好二郎
2026/09/07
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第十七回
四段目、 そば清、 愛宕山
~初心者でも楽しめる、オチがもっと面白くなる落語入門
林家 はな平
2026/09/06
「艶やかな不安の光沢」 第4回
N氏の碑から浪江の海まで
~長崎の碧い海から、忘れられない故郷の海へ。喪失と希望のロードムービーのようなエッセイ
林家 彦三
2026/09/04
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第17回
ありがとう失言、待っているよ暴言
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/09/03
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25