新しい響きを持つ講談への挑戦 神田おりびあ(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第38回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/05/30
神田おりびあ 近影(講談協会 公式HPより)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。〈神田おりびあさんの前編/中編/後編のうちの前編〉
海の向こうの民謡を追いかけて
2026年4月、講談界に新たな二ツ目が誕生した。神田香織門下の三番弟子・神田おりびあだ。今風に言うなら、一見、講談界のキラキラネームのようにも思えるが、その実、洋楽に邦楽、そして自分なりの表現を追い求めて、講談という芸の道を選び、継承者もそう多くない講談の原点でもある軍談・修羅場に果敢に臨んでいる期待の講釈師だ。
ところが、これまでの半生は決して平坦なものではなかった。まずは、おりびあが講釈師になるまでの道のりを尋ねてみた。
―― おりびあさんの「おりびあ」という名前は、楽器の「琵琶」から来たと聞いていますが、ほかにも習い事をしていたと聞いています。そこで講釈師になるまでのお話をお聞かせください。
おりびあ 最初は色々な音楽をやっていたんです。中学の時に不登校の時期があって、引きこもっていたんです。親がクラシックギターをやっていたので、私にとって音楽が逃げ道でした。
クラシックギターにはじまって、ブラジルのサンバやボサノバ、ほかにもユダヤ人の音楽であるラディーノやアゼルバイジャンのムガーム、日本で言えば詩吟に近いと言えばいいでしょうか。宗教的な、あるいは土俗的なテイストの哀愁や郷愁を感じられる民族芸能に強い憧れがありました。
―― 民族音楽に興味を覚えるばかりでなく、実際に様々な音楽に取り組んできたというのは、とても興味深いですね。
おりびあ こんなエピソードもあります。気に入った曲を、英会話のオンラインスクールからその国の出身の人を探し出して、歌詞の意味の解説と発音の仕方を教わったことがあります。ギリシャ人とブルガリア人とベトナム人。海の向こうのアジア人が自分の国の人も知らないような民謡を教わりたいと頼んできたのは初めての経験だったようで、驚かれながらも、曲の復習をしてきてくれて、喜んで教えてくれました。ちなみにその時の曲は『Devoiko Mari Hubava』っていう曲です。
あとはスペイン人とペルー人と一緒にバンドをやっていたご縁で、バルセロナのサロン・デル・マンガ(salon del manga)という巨大なコミケのような集まりに出させていただいて、三味線を担いでいって演奏したりして、1ヵ月半、スペインほぼ全土放浪したこともあります。
私はシュールな作品が好きなんですが、それはダリとかミロ、ルイス・ブニュエルをこの旅でよく見たからです。私がシュルレアリスム(超現実主義)にかなり影響を受けているのは新作軍談にも出ているかと思います。
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