上方落語大会議「なんぼでなんぼ」
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第4回
- 落語
桂 三四郎
2025/10/24
なんでやねん!
その2ヶ月後の10月某日。
僕は都内某百貨店の屋上特設ステージにいた。
あれだけ言っていた野外の仕事を自分がすることになったからだ。
この仕事のオファーがきた時に、僕の脳裏には自分の放った特大ブーメランが返ってきた絵が浮かんでいた。
こういう時はどうするかって?
必死で自分の心に嘘をつくための言い訳探しが始まるのだ……。
「まあ、野外と言っても、ちゃんと客席あって飲食禁止やしな」
「屋上やから、周りに気が散るものないしな」
「同じステージに歌舞伎の人、出はるしな」
「昼の炎天下ちゃうしな」
「なんせ百貨店のお客様やからな」
「まあ、信用できる筋からの仕事やしな」
その上、出演料がみんなと会議した時のボーダーラインとピッタリ同じ金額だったこともあり
二つ返事で出演することにした。
いや、やんのんかい!!!
人の心というのはなんと脆いものなのか
他人には厳しいことを言うくせに、自分にはめちゃくちゃ甘いのだ。
こういうことを肯定する便利な言葉が落語会にはある。
そう、立川談志師匠が残した
「業の肯定」である!!!
人間なんてそんなもんやろ。
みんな僕と同じようにするて。
なんだかんだと自分の心に言い訳を聞かせ続け、ようやく納得して迎えた当日は
土砂降りだった……。
なんでやねん!!!!!!!!!
なんでこんな日に雨降るねん!!!
野外ステージで土砂降りて!!
客席、絶対誰もおらんやろ!!
その前の浅草演芸ホールの出番は、もともと大勢のお客様がお越しいただいていた上に、雨宿り効果でお客様がさらに増えて大入り状態。
同じ雨でもお客様が増える寄席と違って、次は野外ステージだ。
正直かなり過酷な仕事になるだろう。
真夏の炎天下と土砂降りの屋上ステージ
「命の危険がないだけまだマシだ」
そう自分に言い聞かせて、浅草演芸ホールを出る時に聞こえた一言
「これからが本降りらしいよ」
終わった!!!!!!!!
今でもめちゃくちゃ降っているのに、まだ雨足が強まるんかい!!!
僕の言葉には力がある
そして、イベントの詳細を確認して膝から崩れ落ちた。
「桂三四郎師匠による英語落語を披露」
WOW!!! ENGLISH RAKUGO!!!
土砂降りの雨の中、野外で英語の落語を聴くヤツどこにおんねん!!
地獄確定!!!
炎天下の野外 or 土砂降りの英語落語
さあ、あなたがお客様ならどっちを聴きにいく!?
「いや、家でネットフリックス見るわ」
だまれ!!! せめて家で落語を聴けバカタレ!!
強まる雨足……。
濡れる靴下……。
いつもより重く感じる荷物……。
そんな時、頭に一筋の光明が差し込んだ。
「こんだけ降ってたら、中止になるんちゃうかな?」
そうやん!! 中止の可能性もあるやんか!!
これは中止や!! 雨天中止!!
当日キャンセルや!!
そう!! キャンセル料や!!
不労所得!! 中止でキャンセル料!!!
心が急に軽くなり
外は土砂降りにも関わらず、気持ちはどんどん晴れやかになっていく!!
冒頭にも書いた
「言葉には力がある」
そうだ!! 僕の言葉には力がある!!
言葉にするときっと実現する!!
僕の言葉には魂が宿る!!
「中止でキャンセル料……」
そっと呟いてみると、またさらに雨足が強くなった気がした。
「中止でキャンセル料……」
そう言霊だ、言葉に魂を宿らせ実現するんだ!!
「中止でキャンセル料!!」
「ちゅうしできゃんせるりょう!!」
「チュウシデキャンセルリョウ!!」
「chushidekyanseruryo!!」
そうだよ!! 中止でキャンセルなんてよくあることだ!!
あるある探検隊だよ!!
「中止でキャンセル料!!」
「あるある探検隊!!」
「中止でキャンセル料!!」
「あるある探検隊!!」
まさかの同じリズムじゃないか!!!
これは言霊が宿ってきたに違いない!!
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