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長崎
港家小そめの「コソメキネマ」 第3回
- 連載
- 浪曲

今回は、名優の戦地での実体験を元にした映画をご紹介!
25年
6月末は長崎にいました。
チンドン屋の長い付き合いの友人であります、長崎のチンドン屋・かわち家さんが25周年公演を開催するというので、お祝いがてら観に行くことに。
かわち家の親方・河内隆太郎さんは、進路に迷っていた若い頃、見たこともなかった「チンドン屋」という言葉が突然脳裏に閃き、「チンドン屋になる!」と言って周りの人を驚かせました。その後も迷うことなく突き進み、東京で菊乃家〆丸(しめまる)親方に弟子入り、修行を終えると故郷の長崎に帰りチンドン屋を開業したという面白い人です。
私の連れ合いで、三味線を弾いてもらっている沢村博喜さんも元々チンドン屋で、河内さんと同じ、菊乃家親方の元で同時期を過ごした人です。
二人は、兄弟のように仲が良く、大正生まれで当時八十代の〆丸親方は日常会話に「あれはね、東京がまだ東京市と呼ばれていた頃……」という話が出るくらい業界の生き字引的な、長老のような存在。気性の荒い人が多いチンドン屋の親方では珍しく穏やかな、若者二人の話や行動を面白がり、同じ地平で懐深く受け止めるような方でした。三人のバランスがとても良い雰囲気でした。
落語の八つぁん、熊さんがご隠居の家を訪ねるように、下町の親方のお宅へ足繁く通い、炬燵(こたつ)を囲んで、チャキチャキで面倒見の良いおかみさんが出してくれるお茶やお菓子を食べ、何時間も世代を超えて、楽しく話をする。今となっては得難い時間だったと思います。
ああ、あれは確かに青春だった。
チンドン屋などという浮き草稼業は、東京などの都市部でないとなかなか成立しない仕事なのですが、河内親方は長崎で開業するという初心を貫き通し、「チンドン屋って何?」という土地で持ち前の明るさと抜きん出たコミュニケーション能力でコツコツと努力を重ねて25年。
一人で始めた「かわち家」が今ではたくさんのメンバーができ、何百人ものお客様を迎えての公演はアッバレでございました。
▼チンドン・祝い餅つき・紙芝居 かわち家
https://www.kawatiya.jp/
